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「――すぅ」 天使のような、子供のような表情で彼女は眠り続ける。穏やかに、誰かを気にする様子もなく、ただただあどけない様子を見せて。 普段五月蠅くしている彼女であっても、こうしていればきっと誰もが目を奪われるような可愛らしさであることは、よく分かる。 柄じゃ無いセリフだが、こんな様ならきっと耳元で幾らでも優しい言葉をかけてやりたくもなるし、いや、それ以上に起こすことすら躊躇ってしまう。 この幸せは、彼女にずっと持っていてもらいたいものなのだ。それは、今こうしているだけと言う話なだけではない。 少なくとも、自分が彼女の側に居る間はとにかく、こんな表情を浮かべさせてやりたいと思う事しきりで仕方ない。 それほどまでに、彼女は幸せそうなのだ。吐息は暖かく、けれど安らか。閉じられた瞳の睫は微かに揺れる。 「ん……」 微かな呻き。どくん、と自分の胸元が高鳴る。鼓動が一つ高鳴った。愛しさが故か、それとも他の事が原因か。そんなに艶めいた声を上げられてしまったら、自分が抑えられなくなってしまっても仕方ない気がする。 柔らかな頬は微かに朱を差していて、何処までも柔らかい感触を返して来るだろう。けれど、つついて眠りを邪魔しようとは思わない。 「にゅー……」 刹那、少女は、こてん、と頭の向きを変えた。 仰向いて、落ち着いた表情のこいしの顔と正面に相対し、俺はそっと唇を開き――。 「ォぁ、ぁぐ、ぁ……!」 ――足痛ぇええええええええ!!! と叫びそうな声を押し殺した結果がそれだ。鼓動が高くなったのも単純に痛みとかが原因だと言うか鬱血して血栓でも出来かけていたんじゃなかろうか。 思い切り顔を歪め、まるで断末魔のような声を上げたがこれこそ恋人が見ていなくて良かったと思うこと請け合いである。 何だこの拷問。死ぬのか、死ぬだろう常識的に考えて。 いや痛いとか言うもんじゃない痺れたとか言うもんじゃない、死ぬ。端的に言って百回くらい足を針山の上に乗せたような感覚すら覚える。死ぬ。死ぬってもんじゃない。歩けない。 簡単に言えば、仕事の報告作ってる間にこんな事があった訳だ。 『今日は私の日なのに仕事ばっかりで構ってくれない。ずるいー』 『お、ま、え、は、こ、ど、も、か!』 一言ずつ文字を区切りながら、俺は筆を踊らせる。 別段今日が特に忙しい訳ではなくて、手元の仕事を順次順次処理しようとした結果が今日でしかなかった、ただそれだけのことだ。 そも、月期法要が間近に迫っていて今週末休む事が出来ないなら前倒しで仕事を行うしかない。 まだ余裕があるとは言え、月半分を越える前までに処理を行ってしまうべきだ。 つまり、葬祭業の方が忙しい。 けれど結局、決算とかそっちについても当月決算の案件が何件もあってどうしようもない。 何故、自分は、外の世界から幻想郷に来たにも関わらず、外の世界に居たときと同じ事をやっているんだ! 叫びたくなるような衝動を堪えながら、不満そうな表情を浮かべるこいしに聞いてみる。 『大体お前の日って何だよ、こいし』 『ほら、五月十四日。外の世界の暦だけど』 外の世界製カレンダーを指さして彼女は言った。 なるほど、納得したくない。 『誰がうまい語呂を使えと』 『月期法要手伝ったげるから構ってよう』 甘い声を上げてこちらの腰のあたりに抱きつきながら彼女は頭をもたれかからせる。 尚、以前コイツが月期法要の手伝いをしたときはあの寺にいる黒い少女――ぬえと喧嘩をしていたが、会場外だったのでまだ良かった。白蓮の判断であったが、敷居を跨がせないで正解である。 『お前なー……』 『大丈夫、正座して貰えれば良いよ』 呆れ半分で恨み声を上げれば、彼女は小さくにこりと笑みを浮かべた。それくらいであれば、別に構わないと言えば構わない。何より作業の邪魔にならないだろう。大体推測は付いたが、一応確認も含めて聞いてみた。 『何だ?』 『膝枕して欲しいの。今日は私がお姫様』 彼女はにこりと笑みを浮かべる。溜息一つ吐いて正座をすれば、彼女は頭を乗せて嬉しそうにふふー、と笑みを浮かべたのだ。 『だから似合わねぇし王子様のガラじゃねぇよ俺は』 自嘲めいた皮肉一つ、その小憎らしい顔に言ってやる。 『うん、知ってる。こんな貧相な王子様、他のお姫様じゃ誰も愛してくれないよ?』 即答だった。 原因は俺か。貧相で悪かったなチクショウ。 『墨汁顔面にブチ撒けられたいかお前』 『やっても良いけれど私があなたを半殺しにした上で洗濯物全部洗うのあなたになるから宜しくねー♪』 微かに怒気を込めた震え声で牽制したところ、物騒な脅しをしかけながらも反省の色が全く見えないこの無意識をどうしたらいいかと真面目に頭を抱えそうになる。だが、とまれ構っていたら仕事は何時になっても終わらない。 間違いなく、仕事は終わらないのだ。 『えー……ニ、五でこっちがニ、六。からの、五、七。最終的にこれは同じか』 出納があっているのを確認しながら、一つ一つチェック。二重チェックが行う事が出来るのならば良いのだが、上司が居る訳でもないし、算術に長けている狐は頼めばやるだろうが余計な仕事を放ってやる程の余裕などあるのだろうか。 『四、八の……三、ニ一。和算は問題なし。後は」 乗算が終わるまで大人しくしてくれれば、と思ったところでこいしが勝手にこっちの手をいじり始めた。 文鎮を置いて片手で作業していたからか、それともこいしの無意識が見事勝手に人で遊び始めたかのどちらか。 目線を落とせば、こちらの指に彼女が指を絡めてそのまま逆方向から引っ張るようにしていた。 人体で知恵の輪する気かお前。 『へへ』 そのままにさせておくのも癪だったので、指を引っこ抜くとこいしの顎のあたりに沿わせる。 『や、くすぐったい!』 『暴れるなっての』 ころころと笑うこいしの首へとそっと沿わせて、そのまま軽く顎の裏を指の腹で掻いてやる。 『んんー……あんまりくすぐったくなくて、良い感じ、かも』 『そうか、そりゃ良かったな』 目の前の仕事を終わらせるために、しばし集中する。 指の腹でふにり、ふにりと押してやるとその度に嬉しそうな声をこいしはあげていた。 『ん、……うー、単調』 不満そうな声を上げたら、今度はふにふにと頬を揉んでやる。 『んん、んー』 まるで猫のような声を上げたこいしに、今度は指の腹だけで喉元を押してやる。 『うぇ。そっちじゃないー』 『ああそう』 不満の声が聞こえてきたので、今度は顎を撫でるのに戻す。 暫しそれより――。 「どうしてこうなった」 膝枕に静かに寝ているこいし、正座している自分。 顎の下を撫でているだけで眠ってしまう動物が居るとは聞いたが、こいつは猫か兎かどっちかか。 いやどっちも幻想郷には居るだろう、甘えてるかは知らないが。 とまれ、足が痛くなって痺れて動けない、いや、動けないと言った方が正しいだろう。 「……すぅー……」 足が痛くなって死ぬ、いや、死にかねない。 こいつは普段膝枕するときにこれだけの負担をかけられた状態なのか、と内心思うがそれにしてもだ。 「……寝てれば、なあ」 墨の乗った紙を乾かしながら溜息を吐いた。 半分以上乾いているので、もう遠からず畳めるようになるだろう。 寝ていれば、確かにかわいらしい。だが、考えて見て欲しい、これがあのこいしだ。 普段は小憎らしい口を叩いて、間の抜けた事を言いながらこちらを振り回すこいしだ。 勝手気ままも良いところ、出てくる言葉は誰を真似たか皮肉混じり、煽った言葉は時たま激怒で鍋やら座布団やら飛んでくる。 甘えたがりゃ甘えっぱなしで、油断と隙しか見せちゃいない、そうした結果がこの爆睡で、陽が暮れかけても起きやしない。 「……けどまあ」 それでも大事なものであるし、失いたくないものではある。 エゴも良いところではあるが。 「そんだけ好きだって事だなぁ」 間抜けな声を出して、そっと耳元に囁き寄せる。 「愛してる、って、聞いてやしないだろ?」 寝息はぜんぜん変わりはしない、さぁ本格的に足が痛いと思ったところ。 『王子様のキスでお姫様は目覚めるの』 そんな事を言ってたような気がしたのを思い出した、いや、手は手だろうがそれでもやった方がいいのだろうか。 「お姫様とか言ってたしなぁ」 髪へとそっと触れてやると、さらりと銀色が流れた。 あどけない表情に引き込まれる、この幸せを手放したくないと――。 「……なぁ」 頬に触れ、指の形に凹む柔らかさを感じると、彼女の顔が正面に。 聞いていないのなら、ついでの言葉を告げてやろう。 「愛してる、ってだけ言ってもどうせ伝わりゃしないだろ」 すぅー、と寝息だらけの間抜けなこいし。けれど、それも大切な宝物。 「けれど、愛してるもんは仕方ないしお前を幸せにしたいのも間違いない」 確信を込めた口調で呟くが、当然言葉は帰ってこない。けれど、それで良い。 「たまにはキザな台詞吐いてみても良いだろ? 愛しの姫君様、ってな」 口元に唇を寄せる。そして、口づけまで指一本の距離まで迫り――。 「――」 刹那。 「ん――」 「んっ、……んぐっ!?」 こいしがこちらの肩へと腕を回して、唇を押さえつけてくる。 柔らかく、瑞々しい唇に軽くクラクラするものの何とか理性で踏みとどまる。 「んっ、ぷ、はっ」 こいしが唇を離し、にぃー、ととても良い笑みを浮かべた。背筋にとても嫌な汗が走る。 まさか、今。 「おっはよー、王子様ぁ♪ 愛しの姫君、お目覚めですよ?」 コイツ、全部。 「ねぇねぇ、愛してるって言葉も伝わってるよ? キザな台詞がすっごい滑るのもよく知ってるよ?」 聞いていやがったのか――ッ!? 自分の口元がぱくぱくと動くが、言葉が吐き出せない、足は未だ痺れたままで、まともに動かない。 「それでもねぇ、私も大好き。ね、王子様、私を幸せにしてね?」 「なっ……」 こいしはそう言いながらこっちに駆け寄ってきて、そっとこちらの頬にキスを落とした。 自分の唇がぱくぱくと動く。諸々の感情が入り乱れて言葉にならない。 「じゃあちょっと私お寺に行ってくるねー! ぬえに惚気て来る!」 笑いながらこいしは靴を履くと、玄関から飛び出していく。 刹那、ぷちん、と何か自分の奥で切れた音がした、間違いなくそれは堪忍袋の尾だ。 「こぉーーーーーーーーーーーーーーーいぃーーーーーーーーーーーーーーーーしぃーーーーーーーーーーーーーーー!!!」 人里の一角に、俺の怒号が響き渡ったのはその一瞬後の事だった。 ――立ち上がり、後を追おうとしてそのまま立ち上がる事が出来ずにうずくまり、 挙げ句に足が回復した頃に命蓮寺に行った頃には天空でぬえとこいしの弾幕合戦が繰り広げられてて寺の知り合いが片っ端から妙な笑みを浮かべてこちらを見ていて、 ネズミにニヤニヤした表情のまま「君も大変だな」と言われたことを追記しておく。 どうして、こうなった――。 うpろだ0039 ──────────────────────────────────────────────────────────────────────
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こいし1 20スレ目 525 うpろだ85 人里の一番端に位置している表札の無い我が家。 幻想郷に迷い込んでから数年が立ち、自立することを決めた時に それまで世話になっていた慧音さんが里の人達に掛け合って用意してくれたものだ。 長らく人の手が入っていなかったらしく、最初は荒れに荒れていたが、 住むにあたって掃除をする際にこれまた世話好きな慧音さんが手伝ってくれたこともあり、 割とすぐに人が健康で文化的な最低限度生活をできる空間を取り戻した。 あの人には本当に頭が上がらない。いつか恩を返せるだろうか。 「くぅ……」 その年期を感じさせる縁側にて、一人月を仰ぎ酒を啜る。 古びた柱に体重を預け、十月の寒気を伴った夜風で酔いを抑える。 見上げた空は、昨日の豪雨が嘘だったかのように澄み渡っており、 一人で飲む酒の肴にはうってつけのものだ。 こういう風景も幻想郷だからこそ見られるものなのだろう。 向こうではこんなにゆっくりする余裕も無かった。 今日も博麗神社で宴会があったらしいが、気分ではないので丁重にお断りした。 地下の住人も来るらしいが、また次の機会もあるだろう。 「―――あらあら、一人で何をしているのかと思えば……随分と寂しいことを」 と、しみじみ風情を感じていればそれを台無しにする人物が一人。 声の主は神隠しの主犯であり、誰もが手を焼く困ったさんな隙間妖怪、八雲紫そのひとだった。 声をかけられるまで存在に気付けなかったことから、恐らく空間の隙間を潜って来たのだろう。 わざわざご苦労様であるが、相手にする義務も必要も無い。疲れるだけである。 折角の休日に余計な心労を持ちたくはない。 無視して、もう一杯酒を飲むことにする。 「不味いわ」 ……が、気付けば手の中に今まで飲んでいた杯は無く。 いつの間にかに、八雲紫に奪われていた。 「不味いわ」 「二度も言うな。返せ」 「嫌ですわ」 「帰れ」 「客人に対して茶の一杯も出さずにそれはどうかと思うけれど」 「玄関から入らない他人は客じゃない」 「あなたが招かなくても客は客よ」 埒があかない。 どうするかと悩んでいると、八雲紫はどこからともなく高級な雰囲気を漂わせる酒瓶とグラスを 取り出して一人で飲み始めた。何をしに来たんだお前は。 何となく小さな敗北感を覚えて、それを誤魔化す為に徳利から酒を継ぎ足し俺も晩酌を再会した。 互いに一言も喋らず、俺にとっては気に入らない空気が続く。 ――――そして、数十分が経過した頃。 「どうして」 「?」 「どうして、今日の宴会に来なかったのかしら?」 八雲紫の問い。 一呼吸おいて、杯の中の酒を飲み干し答える。 「気分じゃなかった」 「嘘ね」 酒を注ぎ足そうと徳利を引っ繰り返しても、酒は一滴も出て来なかった。 「嘘じゃない」 「嘘よ」 「嘘じゃない」 「嘘」 「嘘じゃ――」 「本当は」 八雲紫が俺の言葉を遮って言う。 「彼女がくるからでしょう? おかしな話。 好きな人に会うのが怖くて、嫌われるのが怖くて来られないなんて」 言葉を失う。 「それに、このままでもいいって自分に嘘をついてる」 言い返せないのは、それが本当のことだからだ。 感じる憤りは、自分に対するものと八雲紫に対するものだろう。 酔いが回っているのか、気分が異様に高揚している。 脳が熱せられ、単純な思考が封じられる。 それ以上は言うな。黙れ。五月蠅い。 「馬鹿な子。まるで恋に恋した臆病な乙女じゃないの」 「黙れ」 「あら怖い。でも普段は落ち着いているあなたがこんなになるのも―――」 「黙れ」 徳利を盆に叩き付け、台詞を遮る。 八雲紫はにやにやと、まるでチェシャ猫のように気味悪く笑っている。 気にくわない。 「それじゃあ、私は退散しましょうか」 きっとすぐに、おもしろいことになるけどね。 最後に耳にまとわりつく声を残して、八雲紫は隙間に消えて行った。 その場には、彼女がいた痕跡として飲みかけの酒瓶と空になったグラスが残されている。 「……」 彼女がいなくなった途端、頭の熱が冷めた。 酒気や熱気も一緒に持って行ったのか。 吹く風邪が異様に寒く感じる。 あまりいい気分はしない。今日はここでお開きにしよう。 「寝よう……」 カタン。 と、片付けを始めようとした瞬間に庭から物音。 今度は何だ、と億劫に感じて振り向けば。 「…えっと……こんばんわ、かな?」 「……」 大きな黒い帽子、癖のある銀の髪、黒いつぶらな瞳。 姉のさとりとは対象的な、胸部の閉じた第三の瞳。 振り向けば、古明地こいしが、そこにいた。 「え、あ……」 言葉に詰まる。 静まっていた熱が再び上昇する。頬に赤みがさし、鼓動が加速する。 脳裏に八雲紫の姿がちらつく。 くそ、落ち着け。これじゃあ―――― 「上がってもいい?」 「っ、ああ……うん…」 我に返り、頷く。 おじゃまします、と断りをいれて靴を脱ぎ礼儀正しく縁側へ上がってくるこいし。 その姿をみていると、一つ疑問が込み上げてきた。 答えは解り切ったようなものだが、一応確認しておく。 「あのさ」 「なに?」 「なんでこんな時間に?」 「あの隙間妖怪が、『面白いものが見られるわよ』って」 やはりか。 瞬時にイメージされる扇子で口元を隠し意地悪く笑う彼女の姿。 不快なそれを、頭を振って追い払う。 「ところで」 「……っ!」 耳元で聞こえた声。 気が付けば目と鼻の先。 徒もすれば唇が触れあいそうな距離にこいしが迫って来ており、思わず後退る。 「さっきの話に出て来た『彼女』って」 ずい。 それに追い打ちを掛けるように更に距離を詰めるこいし。 たまらず、こちらも更に後退る。 そうすると、また容赦無く前へ。 それに合わせて、自分も後ろへ下がる。 「誰のこと?」 ぴたり。 遂に柱にまで追詰められ、これ以上下がる事は出来なくなった。 対してこいしは構わず、先程よりも更に近づいて。 「う……」 言えるわけが無い。 何せ、本人が目の前にいるのだから。 「だめ」 気まずく顔を逸らそうとして、頬を冷たい両手に押さえられた。 指先は冷たいが、不思議と熱が冷めることはない。 「………」 「………」 両者見つめ合うこと数分。 体感時間にすれば永遠にも近いそれは、まさしく生き地獄であった。 息伝いを感じ、睫の一つ一つが大きく見え、毛穴ですら確認できる位置。 密着した体は、衣服を通り越して心臓の鼓動を相手に伝える。 鼻孔から侵入する薔薇の香りに似たこいしの甘い匂い。 感性が麻痺し、理性が崩れてしまいそうな空間で、俺は動けずにいた。 境界線を越えればもう後戻りはできない。 進めば後悔、後にも後悔。 友人以上、恋人未満の心地良く生温い関係が終わる。 その認識が、熱で飛びかけた理性を繋ぎ止めていた。 「……始めはね、胸が変だと思ったの」 ぽつり、と普段と変わらない調子で言う。 「だけど、あなたの姿を見る度に。 あなたの顔をみる度に、ここが弛んでいくような気がして」 こいしが押さえた箇所は、閉じた第三の瞳がある胸。 かつて自ら閉ざした心の弱さ、嫌な現実から逃げた象徴。 「気が付けば、あなたのことをずっと見てた」 それが開きかけているということは、つまり。 「お姉ちゃんに聞いても、教えてくれないの」 自分の考えが正しければ、それは彼女も知っている筈だ。 あえて答えを教えなかった思惑も、俺の考えが間違っていなければ当たっている。 果たして、それは自惚れなのだろうか。 「初めて、人の心が解らないことを後悔した」 目を瞑り、淡々とした声音でつげるこいし。 「ねえ、あなたのことを、もっと教えて?」 徒もすれば、唇が触れあいそうな距離。 それを、俺は。 「――――」 「…………」 自らの意志で、ゼロにした。 「ん……」 軽く触れ合うだけのもの。 初めてのキスは、何の味もしなかった。 十秒もなく、またすぐに離れる。 「どうだった?」 「よく解らない……けど」 頬を朱に染め、戸惑いの表情を見せている。 「お姉ちゃんの言おうとしてたことは解ったわ!」 次に求めてきたのは向こうから。 軽く啄む様に小さな口で俺の唇を挟んでくる。 湿気を持つ、力の無い優しく柔らかい感覚。 繰り返して行われ、口内に言いようのない味が充満する。 行為を受ける内に、それがこいしの味だということに気付いた。 閉じた歯の隙間からにゅるりと浸入する赤い舌。 拒むことなく、自分のそれを彼女のそれに絡める。 俺はこいしを感じて、こいしは俺を感じている。 互いに互いを求め、強く抱きしめあう。 もう離さない、と言わんばかりに強く力を込めて。 「あなたは私が好き」 「お前は?」 「もちろん!」 出来たばかりの恋人たちの夜は、始まったばかり。 行き過ぎた行為に規制をかける魔女も、今はいない。 やがて二人は、どちらからでも無く、服に手をかけて―――― 「さて、これで満足?」 隙間が閉じられ、映像が途絶える。 見ていたものは先程までの行為。 それを見ていた者は、地霊殿の住人たち。 皆一様に顔を真っ赤にし、その後について想像している。 「まさかここまで仲が進むとは思わなかったけど……」 そう口にしたのは、こいしの姉であり地霊殿の主である古明地さとり。 八雲紫に頼んで二人の仲を進展させるようにし、隙間からその様子を覘いていたのだ。 「私は二つの酒瓶を倒しただけよ……じゃあ私はもう行くけれど……」 「ええ、ありがとう……」 大きな欠伸をして、隙間を開き消えて行く彼女を見送り、礼を言う。 「これであなたが幸せになってくれるといいんだけど」 「大丈夫ですよさとりさま!」 「そうそう、相手もそんなに軽いやつじゃなさそうだしねー」 さとりの思惑通り、二人はくっついた。 それが良いことかは解らない。 だからさとりは、ただ妹の幸せのみを願った。 後で自分の彼氏に、さっきの妹に負けないくらい甘えてやろうと決めて。 23スレ目 385 うpろだ365 ――私は、○○のことが好き。 外来人の癖に人里から離れた森の奥に住んでる変わり物だけど、優しいし暇を潰しに遊びに行けばお菓子とお茶をくれる。 ○○の家で昼寝して、ついうっかり寝過ごしちゃってもちゃんと毛布をかけてくれる。 偶に頭を撫でてきて髪をくしゃくしゃにしてくるけど、大きな手は暖かいし気持ちいい。 だから、今日も特に理由は無いけど○○の家に遊びに行った。 行ったんだけど―― 「はぁ……」 「むぅ?」 何というか、違うのだ。 縁側で日向ぼっこしてる姿とか、のんびりとお茶を啜っているところとかはいつもと同じなんだけど。 ……日光浴より月光浴の方が体に良いってこの前言ったんだけど。 何だかよくわからないけど、雰囲気というか空気と言うか。 とにかく、いつもと同じ様子の○○はいつもとどこかが違う○○なのだ。 「あぁ……こいし、いらっしゃい」 「うん、お邪魔するー」 そうして暫くじっと見ていたら、何故だか○○に気付かれた。 いつもなら私が声を掛けるまで絶対に気付かれないのに。 よく分からない。首を傾げつつも、上がっていいと許可を貰ったので、いつもどうりに○○の胸までまっしぐら。 男にしては細身な割に、そこそこ逞しい体は抱き付いて気持ちがいい。 だから今日も抱き付いた。 抱き付いたんだけど―― 「ぐふ、」 「あるぇ?」 思いっきり押し倒してしまった。 そうすると必然的に○○のお腹に馬乗り状態になっちゃうんだけど。 倒れた○○は目が開いたままなのに死んだみたいにピクリとも動かなくて、少し 気持ち悪い。 なにがあったんだろう? 「今日のあなたは意味が分からないんだけど……何か悪いものにでも憑かれたの?」 例えばお燐の怨霊とか。 ○○はよく博麗神社に行くし、変なものが頭に憑いていてもおかしくない。 だけど○○は静かに首を横に振って、私を抱き上げて横に退かすとゆっくりと起き上がった。 「――ケンが、死んだんでさぁ」 「……え?」 ケン、というのは○○の飼っていた犬の名前だ。 大きな白い犬で、お姉ちゃんの飼っていたペットたちと違って知能も低いし大した力も無いけれど、とにかく人懐っこくて毛がふかふかしていた。 私もここに来る度に、背中にもふもふと抱き付いていたものだけれど。 「……なんで?」 「分からないなぁ、一昨日までは元気に庭を駆け回ってたんだがなぁ」 ――昨日にはそこで動かなくなってた。 ポツリと呟いて、縁側の柱に目を向けた。 特に悲しみだとか、辛いだとかそんな感じはしないんだけど。 何にも考えていないような、無意識に犬の駆け回る姿を追っているような。 ○○の目には景色が写っているけど、○○の目には景色が見えていないんだろう。 きっと、○○だけにしか見えないケンの姿を見ているんだろう。 それは良くない、私の好きな○○はそんな顔はしない。 「……えい」 「おう!?」 だから私は○○の頬を抓った。 間抜けな声を出して、赤くなった頬を撫でさする涙目な○○。 よし、ちょっとだけいつもどおり。 「……こいし?」 あ、ちょっとだけ怒ったみたい。 「だって、今日の私の好きなあなたは、私の嫌いなあなたなんだもん」 「はぁ?」 「つまり、私は○○が大好ってこと」 言うだけ言って、○○の胸に顔をうずめる。 ○○は少しだけ呆けていたけど、呆れたように溜め息を吐くと抱きしめ返してくれた。 そうして、大きな手で私の頭を撫でてくれた。 ○○は優しい、私の我が侭にも付き合ってくれる。 もし私にお兄ちゃんがいたら、こんな感じなんだろうなぁって思う。 ぎゅうって抱き付いた○○の体はとっても安心出来て、暖かくて。 暖かい春の陽光に身を任せて、私たちは微睡みに落ちて行った。 ――だから私は、○○が好き。 こいしこいした(新ろだ622) いつものように朝日が射しこみ、その柔らかな光で目が覚める。 青年は両手をピンと広げ、あくびをひとつ。 眠たい目をこすりながら適当に身支度を整え、外出。散歩ともいう。 酒を片手に道をぶらぶらする姿はどこかの鬼を連想させる。まだ飲んではいないのだが。 青年の名は○○。一年ほど前に幻想郷に迷い込んで以来、すっかりこの世界に馴染んでいた。 当人も外の世界に帰るつもりがないらしい。 そして○○の後に続く人影がひとつ。黒い帽子をかぶり、体から伸びた管のようなものが印象深く、その中心には球体がひとつ。それは閉じられた第三の瞳だった。 古明地こいし。本来は地底に住んでいる妖怪である。無意識を操る程度の能力を持ち、様々な深層意識に干渉できる能力である。精神に依存する妖怪からすれば恐るべき能力だろう。 そしてその恐るべき能力は現在○○を尾行するために使われている。 こいしは○○に深い愛情を抱いている。四六時中ついて回りたいほどに。 はじめは人里で見かけてのことであった。幻想郷らしからぬ服装は人目を引き、彼女の興味もはじめはそれに向けられていた。 しかし、彼の穏やかな人柄、のんびりとした空気。それは人妖問わず人気のあるものだった。こいしとてその例外ではない。なにせ四六時中○○を見ているのだから。 博麗神社へ行けば小銭とはいえ必ず賽銭を入れて、その後お茶を飲みながら楽しそうに霊夢と談笑したり。 紅魔館へ行けば門番に快く迎え入れられ吸血鬼の姉妹や魔女たちと一緒に紅茶や菓子に舌鼓を打ち、午後を緩やかに過ごしたり。 そんな彼の姿を見ているうちに自分の胸の中が熱くなるのを感じていた。 最初はそれが何なのか理解できなかった。だから姉のさとりに聞いてみた。 「それは恋というものよ、こいし」 ああ、これが恋なんだ。でも、いつの間に好きになったんだろう。 自分が抱いた感情の正体を知った時の反応は案外淡白なものだった。知ったとて簡単に心持ちが変わるものではなかったし、何より異性に関わることが極端に少なかったのだから。 けれど恋を知ったこいしは○○にますます惹かれていった。 フラフラとあちこちを目的もなく歩く姿がかつての自分に似ていたから興味を引かれたのかもしれない。でも自分と違うのは道行く誰からも好かれていた、という一点だった。 そして自分を恋という新しい旅路へ導いた○○をもっともっと知りたい、願わくば二人一緒にその道を歩んでいきたい。 形のはっきりしない、しかしとても強固なレールがこうして敷かれていった。 そして今に至る。 ○○は人里にやってきてアテがあるわけでもなくぶらぶらと散歩をしていた。その少し後ろにはこいしがぴったりとついて回っている。能力のおかげで誰もこいしの気配を感じられない。 こいしは恋をしているにも関わらず、○○に一切の直接的な接触をしたことがない。 異性に対して極端に内気なのだ。 以前香霖堂で外界から流れてきた本を読んで色々と間違った方向で恋愛を勉強してしまったため、異性についてややおかしな方向で理解を深めてしまった。 少し第三の瞳の瞼が緩んだとはいえ、感情の起伏が少ない彼女が顔から火が出そうなほどに赤面してしまうくらいの内容だった。 前に何度か頭の中で自分と○○が一緒にいるところを想像してみたがろくに顔を見れずに会話にならない、という結末ばかりだった。 もうひとつ、その弊害として妄想癖がひどくなってしまった。 彼女とて四六時中○○について回っているとはいえ不眠不休というわけにはいかない。○○が夜寝るように、彼女もまた地霊殿に戻って眠るし食事だってきちんととる。 そんなわけで、自分が見ていない間の○○がどうしているのだろうと情操教育によろしくない妄想を日々ヒートアップさせているのであった。 そして○○はふらっと寺子屋の前に立ち寄っていた。里の守護者である上白沢慧音が子供たちに勉強を教えている場所である。 「こんにちは先生、お邪魔しますよっと」 「ん、ああ○○か。こんにちは。ってお前はまた酒なんか持ち歩いてるのか、萃香じゃあるまいに…まったく。…大概にしておくんだぞ?」 「はは、酔いつぶれない程度にはしときます」 「お前も子供たちに物事を教えるのはうまいんだからもう少しだな…」 説教なのか日常会話なのかよくわからない話を立ち聞きしながらこいしは○○を見守るように微笑んでいた。 その後も妹紅に会って慧音と同じように呆れたような顔をされていた。どちらも怒っているというわけではなく、心配されているような感じだった。 しばらくすると今度は早苗に出会う。 「あら○○さん、こんにちは」 「あーこんにちは早苗ちゃん。買い物でもしてたの?」 「ええ、夕飯の買い出しに」 「…ははあ、その材料を見たところ今夜は焼き魚、味噌汁、煮物ってとこかな」 「もう、○○さんったら」 「いやー、普通の料理でも作る人がちがうとさ、なんていうの?愛情?」 「ふふ、わかりました。一緒に行きましょう」 「あらー、悪いねえ。お賽銭ははずんどくよ!」 「いえ、そんな。私もその…、好きでやってることですから……」 少し早苗の頬が赤くなる。こいしは逆に不満そうな顔になってゆく。 「それに洩矢様も八坂様も○○さんが来ると嬉しそうになさるんですよ」 「そいつはよかった。俺もお二人さん、いや、お二柱さん?まあいいや、とにかく色々と面白い話も聞かせてもらえるし寝床も貸してもらっちゃってるしね」 付け加えると○○はダメ人間である。どうしようもないレベルの。 しかし、それでも人妖問わず人気があるのは、いい加減に見えて彼が一度受けた恩や親切は絶対に忘れないというところに起因する。 早苗に手を引かれて空中へ浮かんでいく○○。こいしも二人の後を追った。 追ってきた先は守矢神社。こいしも地霊殿の異変の際に一度立ち寄ったことがある。 空から降りてきてすぐ、出迎えるように諏訪子が待っていた。 「あ、早苗おかえりー。ん、○○も来たんだ」 「ああこんにちは諏訪子様。へへへ、成り行きで晩飯をご馳走になることになりまして…」 「またそんなこと言ってー。早苗も簡単に丸め込まれすぎだよー?」 「うう…。で、でもご飯はみんなで食べたほうがきっとおいしいですよ」 「そうそう」 人里の時と同じく楽しそうな会話が流れてくる。 三人のすぐ後ろでこいしは聞き耳を立てていた。不満そうな顔は崩さないまま。 「ねえねえ○○、早苗が夕飯作るまで一緒にあそぼ?」 「お、いいすよ」 「そうだよ。あーうー、一人じゃつまらないからねー。対戦相手が○○しかいないんだもん」 「ははは、光栄です」 諏訪子に上着の袖を引っ張られて○○は神社の奥に引っ込んでしまった。それに合わせて二人の後をついていく。 諏訪子の部屋はそれほど大きくはない部屋だが、退屈しのぎのための道具すなわちゲーム機の類が所狭しと並んでいた。そのせいで見た目以上に狭い。 邪魔になっているものをどけて二人分の座布団を並べて仲良くそこに座っている。 「どうした諏訪子よ、その程度で俺をどうにかできると思ったのか!」 「あーうー、そんなこと言ってられるのも今のうちだよ!」 口調こそ喧嘩をしているようだが絶えず二人は笑顔だった。 そして柱の影には嫉妬妖怪がじーっと二人を見つめ続けていた。もちろんこいしだ。 私の○○とあんなに馴れ馴れしくして、と嫉妬と羨望が入り混じった感情で口をへの字に結んで二人の姿を見ている。 「おや、そんなとこで何してんだい?」 「!?」 どうやら能力で気配は消せても姿そのものは消せるわけではないからさすがに神様にはばれてしまうらしい。 すっかり前方にしか注意の向かなかったこいしの後ろには神奈子が腕を組んで立っていた。 脱兎のごとくその場から逃げていくこいし。 「あ、ちょっと!」 烏天狗も顔負けの速度で妖怪の山をあっという間に飛び去っていく。 しばらくして追ってこないとわかると地面に降り立ち、息を切らせて休む。 どうやら無意識のうちに○○の家の方向へ進んでいたらしい。 これも愛の力なのねと妄想に浸りながら○○の家へ歩を進める。平屋の家には鍵がかかっておらず、どうぞお入りくださいといわんばかりの様子だった。 事実こいしは何度も彼の家に無断で出入りを繰り返している。 だが別に何か盗むわけでもなく、○○の様子を至近距離から胸の鼓動が早くなるのを感じつつ眺めてみたりとか、ろくに掃除も整理整頓もしない○○に代わって勝手にそれをやっておくのだ。 もともとこいしは家事などしなかったが、愛する○○のために姉のさとりから色々と教えてもらったのだ。だから、○○の家は時々こうしてきれいになり、家主である彼自身も少し不思議に思っているのだ。 ○○は勘も悪いダメ男ではあるが、さすがに誰かが自分の部屋に入ったりしているのだろうかと思っている。 そしていつものようにどこから取り出したのかわからない清掃用具を片手に掃除をはじめる。そもそも物の少ない家なので掃除自体は楽なもの。金銭なども○○自身が肌身離さず持っているし盗まれて困るようなものもほとんどない。 まったく私がいないとダメなんだから…と妻のような、恋人のような気持ちでうっとりした表情を浮かべながらほうきでゴミや埃を掃いている。 ひととおり掃除が終わり、ふうっと一息ついて自分の掃除のできを再確認。満足してうなずき、○○の家を後にしようとする。 その時ふと○○の服が目に留まった。一度自分で畳んだそれを再び広げ、抱きしめる。 ああ、○○のにおいがする。そんなことを思いながら、こいしはつい横になってしまった。 守矢神社で見つかってからずいぶんと急に物事が進んでしまったためか、だんだんと眠気が深くなってくる。そしてそのまま、意識が沈んでいく。 「可愛らしい寝顔だことで」 守矢神社で夕飯を済ませた○○が家へと戻っていた。 そして戸を開けると見知らぬ少女がひとり。おまけに自分の服を抱えて眠っているではないか。 これはいったいどういうことかと考えてみたがこの少女と自分は面識はないはずだ。 まあ別に自分の部屋に誰かがいても仕方がないし別段追い出すつもりもない。それはいい。 だが自分の服を抱えて眠る、いったいこれはどういうことだろう。 ○○はそんなことを考えながら、安心した表情で眠るこの少女を膝で寝かせている。 しばらくすると、少しだけ眉をきゅっとひそめて少女が起きたようだ。 「んん…ん…」 こいしは目が覚めた時、頭にふたつの違和感を覚える。 まず、かぶっていたはずの帽子がないこと。もうひとつは、今自分が寝ているのがどうも畳の感触とは違うということ。ぼんやりとした思考で考え、ふと上を見上げる。 青年がにっこりと笑ってこちらを見ていた。誰かに似ている。 あれ、なんで○○がここにいるんだろう。そんなことを考える。 「……!」 そして思い出した。ここは○○の家だということを。そこからすべてを理解し、目をかっと見開いて飛び起きる。 「おやお目覚めのようで」 相変わらず○○はにこやかな表情を崩すことなくこいしと向き合っていた。こいしは自分がどんな状況にあったのかを理解し、ゆでられたように顔を赤くする。 「あ、あ、あの……っ!」 「ああ、なんか家に戻ってきたら君が寝てるもんだからさ。起こすのもなんだか悪いと思ってね、はは」 「え、えっと…」 「そうだそうだ。自己紹介しとこうか。俺は○○。君は?」 「え? わ、わたわた、私は…こ、古明地…こいし……」 最後のほうは消え入りそうな声で俯いていた。 「そっか、こいしっていうのか。…あれ? あのさ、どこかで会ったことあったっけ?」 「う、ううん…ないよ…」 直接会ったことは、だが。 ○○の私生活についてはおそらくこいしが一番詳しいだろう。 「んー、それじゃ誰なんだろう、なんか時々部屋がいやにきれいになってるっぽい時があるんだけどなあ…」 「!!」 ダメ人間の鈍感の○○でもさすがに感づいていたらしく、わからないふりをしてそれとなくこいしの反応を見る。 「…ごめんなさい。本当は私がずっとやってたの…」 「なあんだ、ずっとこいしがやってくれてたのか、そっかそっか」 そういってこいしの頭を撫でる。部屋に無断で入られたことなどまるで気にする様子はなかった。 漫画ならここでこいしから煙が吹いていることであろう。こいしにとってはそのくらいの恥ずかしさだった。同時に、恥ずかしさと同じくらい嬉しさもあった。 「え、えっと…、私もう行くね。そ、それじゃ」 「お? 別にずっといてくれても構わないよ?」 「そ、それって…あの……」 どうやらこいしは○○が言っている意味とは若干違う意味でその言葉を捉えていた。 「ま、またね!」 守矢神社の時と同じようにあわてて外に飛び出す。 心臓が飛び出しそうになるほど恥ずかしい気持ちと同時に、もったいないとも思っていた。せっかく○○と話ができたのに自分から飛び出してきてしまった、と。 でも、よかった。きっかけはどうあれ、自分のことをほんの少しでも知ってもらえて。 だから、今度からは○○に私のことをもっともっと知ってもらいたい。 そう思いながら、すっかり星空に包まれた幻想郷の夜を嬉しそうに飛び立っていった。そして、第三の瞳の瞼ががまた少し緩くなるのを感じた。 それから。 相変わらず気恥ずかしさから直接○○と話すことはなく、またいつものように○○の後をついて回っていた。 だが、○○の部屋に変化が起こっていた。 湯のみ、座布団。そういった道具が一セットずつ増えていた。 こいしのためにと○○がわざわざ買い揃えていたのだ。その他にも菓子などが置かれており、家をしょっちゅう留守にする自分が彼女をもてなすための最大限の感謝の表れだった。 菓子は買ってきたものではなく、○○自身が作ったものだった。 この男、ダメ人間のくせになぜか菓子作りは妙にうまいのだ。あの一件以来○○の家にはほのかに甘い匂いがただよっている。 こいしも○○の好意を素直に受け取っていた。少し残念に思っていたのが、○○自身が掃除をして出て行くようになったことだ。 これでは自分がやることがなくなってしまうと落胆したが、ふと考える。 なぜ○○自身が掃除をするのかを。 彼は自分の家で自由にくつろいでいってくれと、そういう意味で掃除をしたり道具を買い揃えていたということに他ならない。 そう思うと自然と笑みがこぼれるのがわかった。 ○○はこいしが家に来ることを知ってから、彼女にせめて今までの礼をしなければ、と考えていた。 そして時々こいしと鉢合わせて、またわたわたと慌てる彼女を可愛がって微笑ましい時間を過ごすこともあった。 ○○もまた、自分をここまで慕ってくれる少女と関わっていくうちに、自分の胸が熱くなっていくのを感じていた。 こいしと同じなのだ。今考えると多分一目惚れだったんじゃあないかなー。そんな風に考えていた。 こんなやりとりが数ヶ月経ったある日、こいしに書き置きを残して家を後にする○○。 書き置きの内容はこうだった。 『こいしへ── いつも部屋の掃除とかこいしがやってくれてありがとう。重ね重ね何度も繰り返すけど、本当に感謝してる。 しかしまあ知らなかったとはいえ今までろくにお礼も言えなかったから。やけに家の中がきれいになってるなー、とは思ってたんだよ。 ああ、そうそう。これにはちょっとした仕掛けをしておいたんだ。 いやー、こういうのも回りくどいかなって思うんだけどね。照れくさいし俺もしょっちゅう家を留守にしちゃうからさ。 しょうがないことなんだけど、どうにもこの放浪癖は抜けそうになくてね。こいしだったら俺の気持ちをわかってくれるよね? てなわけでいつものように留守にするよ。今日のお菓子はちょっと奮発したからいつもよりおいしいと思う。もちろん味見したけど会心の出来だった。 るろうの旅ってわけじゃないけど、あてもなくぶらぶらするのってやっぱり楽しいんだよなあ。今度こいしも一緒に行かないか?』 そしていつものようにこいしは○○の家へとやってきた。そして書き置きを見つけると── -------------------------------------------------- あとがき ろくに推敲すらしてないしプロットもいい加減だから後半gdgdだよ^q^ 何が書きたかったといえば異性に免疫のないこいしちゃんが書きたかっただけだよ!あとあいしてる。 7/20追記 少しだけ脱字とか修正した。 24スレ目の852氏よりタイトルを拝借。感謝。 新ろだ677 元来、勘が良い方じゃない。 中学、高校とテストをしてきて、あてずっぽで書いたマークが合ってたことは一度も無い。 ……いや、一度くらいはあったかもしれないけど。 どっちにしろ、勘が悪い。 ただ、まあ、その日は何か違った。 縁側に座って、いつものようにお茶を飲む。 淹れたてより、ほんのちょっと時間を置いたのが一番美味しいんだ。 程よく冷めて、お茶の味を口全体で楽しめる。 そんな事を考えながら、ししおどしの声に耳を傾け、午後のひと時を過ごしていた。 「ん?」 虫の知らせってやつか。 体がざわざわした。 「誰かいるの?」 物音はしてない。 だから、確証は無い。完璧な直感だ。 そして、こういうときの直感こそアテにならないのは自分でもよく分かってる。 カタン…… 音がした。 確定だ。 誰かいる。 腰を上げ、音のしたと思われる方向へと歩いていく。 畳の感触が裸足には心地良い。 変わりない我が家の風景。大きくは無いが、落ち着いた雰囲気がお気に入りだ。 座敷を抜け、玄関の場所。 そこに、少女がいた。 黒い帽子、閉じた胸の瞳。 くせのある銀髪は姉のそれとは対照的だ。 「こいし……?」 「あ……」 驚いたようなこいしの顔。 絶対に気付かれないと思っていたのだろう。 「えと……」 「あー……」 沈黙が数分。 「……お邪魔していいかな……?」 「え、ああ。どうぞ、上がってくれ」 消え入りそうなこいしの声が、気まずい静寂を破壊した。 「美味しい……」 「そりゃ、俺が淹れたお茶だからな」 縁側にこいしと二人。 俺が淹れたお茶を互いに飲んで、外を眺めている。 秋も近づいてきて、日は陰り、風が存在を大きくする。 葉の色も染まり、緑の風景は、紅へと変容していた。 「ははっ、面白い冗談を言うね」 「冗談じゃない!?」 「あははっ」 そう言いながらも、こいしは美味しそうにお茶を飲んでくれる。 「そういやさ、何で今日は家に来たの?」 「え? あ……ああ、うん。ちょっと……悩み事があって……」 「悩み?」 はて、こいしに悩み事とは珍しい。 そもそも妖怪に悩み事が珍しい。口に出したら殺されるだろうが。 「うん。悩み事」 「へえ。良かったら、話を聞こうか?」 「聞いてもらうために来たんだよ」 「ああ、そうか」 「もう……」 少し、頬を膨らませるこいし。 秋風が、互いの間を吹きぬけた。 「それで、悩みってのは?」 「うん。……私ね、最近、胸が苦しいの」 「……ふむ。そういうのは永琳さんの場所へ行った方が早いんじゃないかな」 心臓病か何かだろうか。 医学のいの字も知らない俺に相談されても困るな。 「もう、行ったよ! でもね、原因が分からないって」 「なるほど」 永琳さんでもわからないことを俺に相談されても、正直、困る。 「うん」 「今も苦しいの?」 「うん、○○を見たら、余計に……」 なんだ! まるで、俺が悪いみたいじゃないか! 「俺が悪いのか、それ……」 「違う、違うよ。違うの。言葉じゃ上手く言えないけど……○○は悪くないの……」 一体どうしたのか、この子は。 いつもの様子じゃない。 やけにしおらしいというか、女の子らしいというか。 いつもなら、そんな素振りは欠片もみせないのに。本当に病気か? 「ねえ、○○……」 「ん?」 「ギュッて……して」 「へ」 何と言ったか。 言葉を反芻し、意味を理解する前に、こいしが、俺の胸に、 「……っ」 「あ……」 飛び込んで来た。 「お願い、お願い。早く、ギュッてして……お願いだから……」 泣きそうな声で、眼に僅かばかりの雫を浮かべて。 「……あ、ああ……」 ギュッと。 こいしは思いのほか小さかった。 この、両の腕。すっぽりと収まってくれる。 息を吸えば、髪より香る匂いが、鼻の中へと入ってくる。 「今も、今もね、胸が苦しいよ。ドキドキしてて、落ち着かないの」 「こいし……」 「でもね、すごく安心する。すごく嬉しいの……」 「……」 こいしの気持ちの正体。 自惚れじゃ無ければ当たりはつく。 でも、俺の勘は鈍いから。 これもきっと外れるわけで。 だったら、気付かないフリをして。 まずは、今、できることをしよう。 「○○……もっと、もっとギュッとして……私が、どこにも行かないように、もっと、ギュッと……」 「……うん」 腕に、更に力を込めた。 背中に回し手の片方を、こいしの後頭部に持ってきて、胸に押し付けるように、ギュッと抱きしめる。 その直前。 「……………………き……………………」 こいしが何かを言った気がした。 でも、勘の悪い俺は何を言ったかわからなかった。 ただ、黙って、抱きしめる力を強くした。 新ろだ2-171 ~プライバシー保護のため音声は変更しています~ <文々。新聞の者です。質問いいですか? 「え? あ、はい。どうぞどうぞ」 <最近某DSの恋愛ゲームが幻想郷で流行っているらしいのですが、あなたはお持ちでしょうか? 「え? ラ○プラスのことですか? ハハ、持っていますよ。もちろん恋人には内緒ですけどね。もし知られたらどんな目に遭うか……。え? 後ろ? 志村後ろ後ろ? 一体なにうわなにするやめ ~\(^o^)/~ 「○○」 ○○は恋人であるこいしによって地霊殿のこいしルームに誘拐されてしまった。そしてラ○プラスのカセットを目の前に置かれ、正座させられていた。 「な、なんでしょうか」 選択肢を間違えたら即デッドエンドだ! そう○○は思った。 ○○と恋人になった時、紆余曲折を経て第三の瞳を開いたこいし。心を読めるこいし相手に隠しごとはできない訳なのだが、今までこいし相手にラ○プラス所持が発覚しなかったのは、こいしの前ではこいしのことしか考えないという○○の努力というか、癖というか、惚気というかの賜物である。 ただ、今となってはそれも無意味である。 「○○は私に言ったよね? 「俺はこいしだけを愛してる」って」 「も、もちろんでございます! 今でもその言葉に偽りはございません!」 「へー? じゃあコレは何なのかなー? 私分からないよー」 こいしの足がカセットの上に移動する。同時にカセットの運命のカウントダウンが始まった。 「お、おおおお落ち着いてくれこいし! 話せば分かる! 冷静になるんだ! ビークール、ビークール! 俺はそれを教科書の一つとして採用していただけなんだ!」 ピタ、とこいしの足が停止する。 こいしは○○を見るとんよく心の中が見えるようにか第三の目を顔の前へと移動させた。 「教科書?」 「あ、ああ。最近、俺はこいしとのイチャにもう少しボリュームが欲しくなった。そこでなにか新しいイチャを開拓しようと思ったんだが、もちろんそんなことを教えてくれる知り合いもいなければ、読み物も無い。だからラ○プラスを教科書とすることでイチャの幅を広げようとしたんだ!」 叫ぶように言う○○。こいしはそんな○○をスッと見ると、近づいて抱きつき、○○を見上げた。 「私、○○に飽きられちゃったのかと思った」 呟くこいし。目には涙まで浮かべている。 「こ、こいし!?」 「耐えられないよ、私。○○が私のこと嫌いになっちゃうなんて」 ぎゅ、とこいしは抱きしめる力を強めた。 「お願い、私を嫌いにならないで。○○だけが私を愛してくれている。私を嫌わないでいてくれている。○○が私を嫌いになったら、私今度は絶対に目を開けられなくなっちゃう」 ポロポロと、頬を伝って涙が落ちた。 「……ごめんな、誤解させるようなことしちまって。そうだよな、こいしがそう考えちまうのも無理はないよな……。今度からはラ○プラスに頼らないでこいしとのイチャを模索するよ」 「もう誤解されるようなことしない?」 「ああ」 「私を今まで以上に愛してくれる?」 「ああ」 「じゃあ、抱きしめて、キスして……?」 ほんのりと顔を赤らめて言うこいし。 ○○はこいしを抱きしめ返す。そしてどちらともなく唇を寄せあい、二人はキスをした。 いつしか、こいしの涙は嬉涙に変わっていた。 アトガキ 遅筆なせいで大分流れに乗り遅れてしまった……。内容と短さに関してはSS久しぶりだし、ラブプラス全然知らないので多少は許してほしいです。 全部PSPで書いてPSPで投稿したら大分疲れました。
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こいし2 新ろだ2-226 緑が生い茂る大地。 花々は咲き乱れ、鳥は囀り、生物は生を謳歌する。 風が草木をそよそよと揺らす。 そんな風景。 そんな世界。 自分が知るはずもなかった理想郷。 「だがそれをキャンバスに描ききるだけの力量は、自分にはないのであった、まる」 そう自嘲気味に漏らす青年。 彼が今居る場所は幻想郷の博麗神社の境内。 そこで彼がしているのは、鳥居から見える風景をキャンバスに描くということである。 しばらく構図に悩んでいると、不意に横から尋ねられる。 「貴方も暇ねぇ、絵なんて書いてる暇があったら境内の掃除でも手伝ってもらいたいもんだわ」 「絵を描くのは自分の生きがいだからね、それにここに尋ねて来る人自体も少ないだろうに」 「生きがいねぇ……私には理解出来ないことね。 それに、掃除は誰かのためにやることではないわよ」 「そりゃごもっともで。 もう少しでイメージが湧きそうだからそうしたら手伝うよ」 そう彼女、霊夢におどけて言う。 霊夢はそれ程期待してもいなかったのか、こちらに興味を無くすとすぐに境内へと戻っていった。 外の世界では暇さえあれば絵を描いていた青年――○○は、ある日突然神隠しにあって幻想郷へとやってきた。 彼が他の来訪者と違って幸運だったのは、たまたま博麗神社の麓へと出られたからであろう。 そうでなければ他の例に漏れず物言わぬ死体となってしまっていたはずだ。 訳もわからず混乱しながらも神社への階段を登ると、お茶を飲んでいる紅白の巫女と出会ってこの世界についての説明を受けた。 初めは信じようともしていなかったが、彼女が普通に空を飛んでいるのを見ては嫌でも信じざるを得なかった。 しかし、混乱したのは初めだけでこの世界のことを知れば知るほど、彼の中での想像力は掻き立てられた。 当然であろう、此処には外の世界ではけっして見ることの出来ないものに溢れていたのだから。 そして霊夢からの、外の世界に戻るか? という問いかけに彼は首を振る。 そうして人里で住み込みながら、神社へと赴き筆を走らせるのが最近の彼の日課になっていた。 「ふぅ……それにしても、やっぱりまだまだ表現が足りてないよなぁ。 もっとこの風景の感動を形にしたいんだが……――うん?」 少し休憩を挟もうと筆を置いてキャンバスを眺めていると不意に違和感を感じる。 ――はて? なんだろう? そう思って回りを見渡すと、隣に置いておいた湯飲みがなくなっている。 霊夢が持っていったかな? とも思ったが、そんな素振りはなかったはずだ。 何処かに転がってしまったかな……そう思って再度湯飲みが置いてあった場所を見ると…… 「……うーん、痴呆症にでもなったか」 そう自嘲気味に呟いた。 湯飲みは初めに置いていたはずの場所に、しっかり鎮座していたのだ。 ――ちょっと集中し過ぎたのかね…… 最近こういったことが多い。 なので彼は気分を切り替えようと、霊夢の手伝いをするために境内へと向かうことにした。 彼はこの時まだ気付いてはいなかった。 彼は、一人ではなかったということに。 彼の絵をずっと一緒に見ていた、彼女が居たのだということに。 「あら? 一段落したのかしら?」 「あぁ、ちょっとさすがに根を詰めすぎたみたいだからね。 気分転換がてら、掃除を手伝わせてもらうよ」 「殊勝な心掛けねぇ。 あ、素敵な賽銭箱はあっちよ?」 「掃除だけじゃなく賽銭まで要求ですかあんたは……」 「掃除は私に対しての気持ち、賽銭は神様に対しての気持ちでしょう。 何もおかしいことはないわ」 そう笑いながら返してくる彼女に苦笑しながら、縁側にキャンバスを置き霊夢と共に境内を掃除する。 しばらくそうしていると、不意に置いてあったキャンバスに目が行った。 「あれ……取れちゃったか」 絵の上に汚れないようにと乗っけていた布がいつの間にか取れている。 再度乗せようとしたところ霊夢が呟く。 「あら? 気付いてなかったの? さっきから熱心にあの子が見てたけども」 「あの子?」 おかしなことを言う、此処には霊夢と自分しか居ないはずなのに…… そう思っていると、目の前に突然女の子が現れた。 つい一瞬前まで確かにそこには誰も居なかった。 そのはずだったが…… いきなりの事態に混乱していると、その女の子が霊夢に話しかける。 「こんにちは、霊夢。 良い天気ね」 「そうね、こんな日は掃除もはかどるわ。 ところで、さっきから後ろで見てたけどもそんなにあの絵面白かった?」 「あら、霊夢は気付いていたのね。 えぇ、とても面白かったわよ。 筆を握っては唸りっぱなしで全く進まずに、独り言を呟いている様とかね」 「あぁ、絵が面白かったわけではないのね……まぁあんたらしいわ」 普通に現れた子と談笑する霊夢に、置いていかれていた思考が追いついて慌てて尋ねる。 「ちょ、ちょっと霊夢。 この子は何時から此処に? というかこの子は誰なのさ?」 「あぁ、○○はまだ会ったことが……というか意識したことがなかったのね。 この子は――」 説明しようとする霊夢を遮って、何処かふわふわした感じの子が話し出した。 「こんにちは、○○。 初めまして……で良いんだよね。 実際にお喋りするのは初めてだし。 私は古明地こいし、地底の妖怪で覚よ」 「あ、ああ初めまして。 ○○っていう人里の人間だ。 実際にっていうのは一体……それに覚ってどんな妖怪なんだ?」 「覚っていうのは相手の考えていることが読める妖怪なの。 私はお姉ちゃんと違って、瞳を閉ざしているから心を読むことは出来ないんだけどもね。 後、随分前から私○○の絵を描いているところを隣で見てたのよ。 たまにお茶とかももらったりしたわ」 そう言って、胸の辺りに付いている丸い目玉状のアクセサリを触る。 「そうなのか……全然気付かなかった」 「あぁそれはしょうがないわ。 こいしは無意識で行動しているから、滅多なことでは普通の人じゃ認識出来ないのよ」 私は普通に見えるけどね――そう霊夢は付け足した。 成る程、最近のことやさっきの湯飲みのことなどはこいしがしていたことだったのか、と納得する。 しかし……ということは、だ。 「……ってことは俺が描きながらぶつぶつ呟いているところとか、全部見られてたってことだよな……」 そう心持ち、気落ちしながらも尋ねてみる。 「うん、何度も何度もぼそぼそ言ってるのとかすっごい見てて楽しかったよー」 「……orz」 そんな良い笑顔で答えられたら打ちひしがれるしか出来ませんって、えぇ。 はぁ……恥ずかしいなぁ。 「ところで、今日はもう貴方は絵を描かないの?」 掃除も終わり縁側で三人で和んでいると不意にこいしに尋ねられる。 「あぁ、とりあえずは今日はお終いかな。 急いで描き上げたいものがあるわけでもないし」 「そう……残念。 楽しいものがまた見られると思ったのに」 本当に絵を見るのが楽しみだったのか、口を尖らせて立ち上がるこいし。 「あら? もう行くのかしら?」 「うん、またその辺りをふらふらしてくるわ。 また寄るからその時はお茶飲ましてねー」 「お賽銭入れないなら来るな!」 そう霊夢と会話しながら立ち去ろうとしているこいしに声を掛ける。 「もう行くのか、それじゃあ――またね、こいし」 「……また?」 何故か不思議そうな顔でこちらに振り返る。 はて? 何か変なこと言ったかな…… 「あぁ、また絵を描いているところを見に来るんだろう? その時俺は気付かないかもしれないけども、出来れば声掛けてもらえると嬉しいな。 感想とかももらいたいし」 そう伝える。 するとこいしは少し驚いた様な顔をしていたが、すぐに満面の笑みに変わる。 「――うん! その時は絶対貴方にもわかるようにするからね!」 そうして初めの時と同じ様に、一瞬でこいしは視界から消えた。 自分が消えた様に見えるだけで実際は居るのかもしれないが、判らなかった。 しかし……大分嬉しそうだったけども恥ずかしがりやなのかねぇ…… 「さて、俺もそろそろ帰るかな。 もう少ししたら暗くなっちまう」 「あぁ、夕飯ぐらいは食べていきなさいな。 掃除も手伝ってもらっちゃったしね。 帰り送るぐらいは……護符渡すぐらいはしてあげるわよ」 「ありがたいがそこは面倒くさがらないでくれよ……」 ――冗談よ冗談、くすりとそんな風に笑って霊夢が神社の中へと入っていく。 そうして自分も付いていく。 さて――明日はどんな絵を描こうか。 そんなことを考えながら。 ……あれ? こいしちゃんのお話書こうと思ったんだけど霊夢のがメインに近いかこれ? 新ろだ2-325 ここは幻想郷の旧地獄、地霊殿。 よく忘れられるが、元は立派に地獄になっていたところである。 「さとりさまー。空は暇ですー」 「あたいもー」 「あなた達は……でもまぁ、確かに暇ね」 暇を嘆いている三人の少女。 地獄鴉の長、お空 死体運びの火車、お燐 そして地霊殿の主、さとり。 主、とは言っても地霊殿の管理なんて掃除以外特にやる事もない。 閑話休題、平平凡凡に暮らしていた。 そんな時、さとりの前に死神の使いが飛んで来て、一枚の紙を置いて行った。 「あら、これは…?」 『地霊殿の主様へ』 そう表面に綴られた封筒だった。 「さとりさま!さとりさま!早く開けてみましょう!」 「こりゃぁ何が入ってるんだろうねぇ」 お空とお燐も興味津津なようだ。 退屈だった毎日にいつもと違う事が起きれば、誰でも心なしかワクワクするものだ。 さとりは丁寧に封をとり、中身を読み上げる。 『緊急連絡 現地獄において、大規模な事故が発生しました。 地獄のほぼ全てが使用不能になり、大変苦しい状況です。 このままでは地獄の亡者が反乱を起こすかもしれません。 よって、旧地獄である地霊殿に、全ての亡者を移転させます。 なのであなたたちは、一ヶ月以内に地霊殿の地獄としての機能を回復させて下さい。 閻魔 四季映姫・ヤマザナドゥ』 「「「は?」」」 「あ、あの?さとりさま?いったいぜんたい何がどうなって?」 「そ、そうですよ!大体地獄の建設を一ヶ月とか無理がありすぎますよ!てゆーか地霊殿って旧灼熱地獄だし!」 「……ちょっと電話してくるわ」 危機感を募らせたさとりは黒いオーラを出しながら受話器を取り、電話をかけた。 プルルルル、という呼び出し音の数が1回、2回と増えていき、さとりのイライラも回数に比例して増えていった。 8回になったところで留守番電話サービスに接続された。 「これだから上の奴らは……!朝の10時なんだから電話の応対くらいまともにしなさいよあの給料泥棒共……!」 「さとりさま……怖い……」 「オーラが凄い事になってるねぇ……」 ガシャン!と乱暴に受話器を電話に戻し、さとりは真剣な表情で二匹のペットに語りかけた。 「二人共喜びなさい。ただいまより地霊殿は厳戒体制になります。暇なんて言ってられなくなるわ」 「えーっと、つまり……」 「あたい達で……地獄の修復を……?灼熱地獄以外のも全部?一ヶ月で?」 「全部ではないけれど、大体そうよ。地獄の亡者が暴れる前に止めなくてはいけないから」 「無理じゃね?」 「あたいもそう思います。冗談抜きで」 「やる、やらないの問題ではないわ。もしできなければ、この地霊殿は何らかの形で処分されるでしょう」 「処分、と言うと?」 「主の交代、とかかしらね。地霊殿は所詮下請けだし」 「そんなの、理不尽じゃないですか!さとりさまは何も悪い事してないのに!」 「大なり小なり組織の中で暮らすとは、そういうことよ。だから、精一杯頑張りましょ?」 「は、はい!あたいに出来る事ならなんでも!」 「私も頑張ります!何でも言って下さい!」 「そうね…冗談抜きで頑張ってもらうわ。じゃないと絶対に無理だし」 「さて…こいし?居るんでしょ?」 さとりは近場の空間に語りかけた。 すると、突然少女が何も無い空間から出てきた。 「……おねぇちゃん……あのね……私でよかったら……」 「助けてちょうだい、こいし。今あなたが必要なの」 言いづらそうにしているこいしと呼ばれた白髪の女の子に、さとりは頭を下げた。 「……うん!私、手伝うよ!あんまり役に立てないかもだけど、頑張る!」 こいしは、普段さとりとあまり喋らない。 別に姉妹仲が悪いわけではないのだが、こいしの胸の閉じた第三の瞳が二人の距離を物語っていた。 しかし、こいしはいつも自分が姉に迷惑をかけてばかりで申し訳なく、何か恩返しがしたいと思っていた。 姉のピンチを助けられるかもしれないと思い、勇気を振り絞って助力を買って出たのだ。 さとりは、そんな成長した妹の姿を見て不覚にも涙腺が緩みかけた。 「有難う、こいし。さて、早速だけど役割を分担するわよ。 お空は灼熱地獄の修復。使える場所とエネルギーには限りがあるから難しいかもしれないけど…… 熱のプロフェッショナルであるあなたを信じてるわ。 次、お燐は地獄の亡者を一時収容施設に運んでもらうわ。いつまでも壊れた地獄においては置けないし。 手の届くところで管理するわ。こっちもかなりのハイペースでやらないと間に合わないわね。大変だろうけど、お願い。 こいしは、針山地獄の建設。支給されてる針が使い物になるかどうか……多分予算との勝負になるわ。お願いね。 さて、質問はあるかしら?」 「あのー、ハイペースってどの位ですかね?」 「さぁ?向こうの人数が分からないと行動しようがないわ」 「ですよねー……」 「こいし。あなたは針山地獄の件は大体一週間と半週でケリをつけて。他にも仕事は山積みだから。 一応むこうに助っ人を用意しているわ。私の数少ない友人で、○○って名前よ。困ったら彼に聞きなさい。」 「う、うん、私頑張る!(○○…かぁ…どんな人なんだろ…怖い人じゃないといいなぁ)」 「そして、仕事で困った事、行き詰った事があったら私に連絡しなさい。一応旧地獄中にサードアイネットワークを張り巡らせてるから」 「分かりました!」 「じゃあ、早速それぞれの仕事場に行ってちょうだい。解散!」 こうして、一ヶ月に及ぶ地霊殿デスマーチが始まった…… 新ろだ2-326(***新ろだ2-325続き) ここは旧地獄の中の空きスペース。 ここに針山地獄が建設される予定の更地だ。 そんな場所にポツンと建つ事務所に、こいしは足を踏み入れた。 「おじゃまします……」 そろそろと入って来たこいしを出迎えたのは、メガネをかけた青年だった。ここにいる、という事は獄卒だろう。 「えーと……あなたが○○さんですか?」 「はい。ああ、あなたがさとりさんの妹のこいしさんですね。敬語はいいですよ。自分の事も○○で構いません。」 「じゃあ、よろしくね。○○。(よかった、怖い人じゃないみたい)」 「はい。では早速ですが、今回の針山地獄建設の説明をします。しっかり聞いて下さい」 「う、うん」 「まず、設計です。どのような形にするのかですね。今回はかなり予算が無い中でやるので、これが一番キツイと思います」 「その予算っていくらぐらいなの?」 「現地獄の三分の一ですね。これで現地獄より狭い所で同レベルの針山地獄を作らねばなりません」 こいしは事の重大さをなんとなく理解したのか、冷や汗をかいていた。 「で、出来るの?そんな事…」 「やるしかありませんね。次ですが工事です。まぁこれは獄卒使えば大丈夫ですから」 「どのくらいかかると思う?」 「最低一週間は要りますね」 「私、おねぇちゃんに一週間と半週以内に終わらせてっていわれてるの。大丈夫かなぁ」 「一週間と半週か……厳しいですが、さとりさんの期待に答えるためになんとか頑張りましょう。それで、最後に安全確認で終わりです。」 「うう、これだけの事を二週間でやるのかぁ……うん、ガンバろ」 「とりあえず設計ですね。針の材質が問題なんですよ」 「どういう事?」 「ここに一本あるコレが今回支給された針なんですが……ちょっと見てて下さい」 ○○はそう言うと3メートルはあるであろう針をとりだした。 「この豚肉なんですが」 ○○は豚肉を針先に押し付けた。 豚肉は針の上でブヨブヨするばかりで一向に刺さらない。 それどころか豚肉が当たっていた部分が欠け始めた。 「全然刺さらないね……しかもちょっと欠けちゃったし……」 「そうなんです。とにかくオンボロでこんなのでは地獄の亡者を貫くなどとてもとても……」 「どうしよう…新しい針には変えられないんだよね?」 「はい。予算の都合上変えられても更にオンボロのものにしか変えられないでしょうね」 「うう、早速問題発生かぁ……」 「とりあえずこの問題について考えましょう。現地獄の設計図はありますから」 「そうだね……(大変そうだなぁ……)」 ~二時間後~ 「うー……まるでアイデアが出てこない……」 「そもそもこいしさんは初めてですしね。いきなり出来る方が怖いですよ」 「うう、どーしよー……」 ~四時間後~ 「うー……」 「こいしさん、気晴らしに外に出て来ては?此処にいても煮詰まるばっかりですよ?」 「そうだね……ちょっと行ってくる」 「はい」 ~少女散歩中~ 「はぁ……どうしよう。折角おねぇちゃんに期待されてるのに……」 「あ、こいしさまー」 「あ、お燐。そっちはどう?」 「まだ今日のノルマの三分の一も終わってません……」 よくみればお燐の顔が少々青ざめていた。 「だよね……こっちも全く進まなくてさ……」 「でもまぁ、さとりさまのためですからね。頑張らないと」 「……そうだね。とにかく頑張らないと。じゃね、お燐」 「はい、こいしさま。また後で。」 ~六時間後~ 「おかえりなさい、こいしさん」 「ただいま、○○。なんか思いついた?」 「……さっぱりですね。」 「だよねー……」 ~八時間後~ 「ZZZ……」 「毛布でもかけておきますか……」 「ふぅ……」 「あー、現地獄の設計図役に立たねぇー!誰だよこんな見栄えばっかりの地獄作ったの!」 「大体構造を無駄に複雑にしすぎだっつーの!中身ボロボロじゃねーか!そらいつか事故るに決まってんだろ!」 「結局一から書き直しだよ畜生!現地獄の設計者死ね!死んでるけど死ね!」 「ん……?」 「ああ、起こしちゃったかな。こいしさんは寝てて良いですよ。まだ夜ですから。」 「……○○、あんまり、無理しちゃ、駄目……だよ……?ZZZ……」 「有難うございます。無理はしないようにしますよ。」 ~十時間後~ 「ZZZ……」 「あ゛ー、疲れた。どうすっかなぁ……」 ピピピピピ! 「さとりさんからか……」 ガチャッ 『そっちはどう?』 『正直難しいですね……最初の課題で躓いてます』 『まぁもう少し時間はあるから……それよりこいしは迷惑かけてないかしら?』 『ちゃんと脳味噌振り絞って考えてくれてますよ。今は寝ちゃってますけど』 『そう……まぁあなたならやってくれるでしょう。期待してるわ』 『全力でお答えしますとも。できるだけね。ちなみに他の所の状況は?』 『お空は部屋に籠りっぱなしで構造計算してるわ。進歩率は7%ぐらいね。お燐は今日のノルマの半分を終えたところよ。』 『でも凄くきつそうだから多分あのペースは続かないわね』 『了解しました。こっちも出来る限り早く終わらせます』 『お願いね。それじゃ』 ガチャッ 「さて、頑張んないとなぁ!」 ~十四時間後~ 「ぐぁーー……やっと針の改修の基礎設計が出来てきた…もう外明け方だな……」 「ん……○○……?」 「ああ、こいしさん。まだ寝てていいですよ。時間になったら起こしますから」 「○○……まだ仕事してたの?目のクマが酷いよ……?」 「まぁ、一応」 「じゃあ私もする」 「でも寝てないと明日、いやもう今日か。持ちませんよ?」 「私妖怪だから体強いの。だから大丈夫。それより○○にまかせっきりにはできないよ」 「……有難うございます。では、そこの次の針の設計図に、改修後の変更点を文字で書き込んで下さい。」 「うん!」 ~十六時間後~ 「結局針を回転させて刺突性を上げるのと、針の外側を薄い金属で覆う案で決定かな?」 「ですね。いやー、助かりました。針を回転させる発想は無かったです」 「えへへ……。私も役に立った?」 「はい、百人力でしたよ」 こいしはうつらうつら船を漕ぎながら半目で椅子に座っている。 支えてあげなければ今にも椅子から転げ落ちてしまいそうだ。 「ありがと……よし、これでおねぇちゃんの役にもたてたか……n……ZZZ」 「……眠っちゃったか。ホント有難うございました、こいしさん」 「さて、発注しないとなぁ」 ピリリリリ! ガチャッ 『さとりさん、丁度いい所に!玉鋼って発注できます?』 『ええ、出来るわよ。……なるほど。薄くて性能のいい金属で針をコーティングすると。』 『そういう事です。お願いしますね。』 『分かったわ。それで、連絡した要件なのだけれど……』 『何ですか?』 『……今日のノルマを終えた所で、お燐が倒れたわ』 『……』 『過労ね。後一週間は安静にしてないとダメみたい』 『……つまり』 『思ってる通りよ。明日から仕事が増えるわ』 『ノルマは?』 『お燐の二分の一でいいわ。残りは私がなんとかする』 『分かりました。さとりさんも頑張りすぎて倒れないで下さいね。あなたが倒れたら総崩れですよ』 『分かってるわ。ありがと。…ごめんなさいね、たくさん仕事押し付けて』 『さとりさんも一回自分の心読んだなら分かるでしょ?自分はピンチになればなるほど……』 『興奮するドM……だったかしら?』 『なんでそうなるんですか!天然ですか!?狙ってますよね!?』 『フフッ……まぁどちらでもあまり変わらないけど……ちょっと安心したわ。こいしは?』 『夜中に仕事したせいでお疲れのようで。仮眠所でぐっすりですね』 『あの子も頑張ってくれているのね……』 『ホント有難いかぎりですよ』 『それじゃあ仕事は増えるけど、なんとかお願いね』 『はい』 ガチャッ 「……よし、俺も寝るかぁ!」 「明日はお燐さんのノルマからかなぁ……ZZZ」 「ZZZ……おねぇちゃん……○○……私、頑張る……ZZZ」 ーーー地霊殿の稼働予定日まであと、28日 新ろだ2-330 空に丸く、月が出ていた。 宵闇にはとても明るくて、一瞬目が眩む。 頭には鈍痛、どう考えても飲み過ぎた結果だ。 仲秋の名月。 神社の宴会で鬼に捕まって、酒を飲まされた後は何も覚えちゃいない。 大して酒に強い訳でもないのに、鬼の酒に付き合う方が阿呆臭い。 とは言えいい奴らだし、誘いを断る訳にも行くまい。 「あ。目、醒めた?」 ふと俺を覗き込む少女の姿が見える。 古明地こいし。 「残念、そのまま目を覚まさなかったら地霊殿の壁に飾ってあげようと思ってたのに」 「それは、勘弁して頂きたい所だな。……ここは?」 帽子を外した彼女の姿が薄闇の中ぼんやりと見える。 物騒な発言をさらっと流しながら、軽く頭を動かそうとする。 「ひゃっ」 こいしが何故か身悶えし、声を上げた。 頭に触れる絹の感覚、程良い柔らかさの枕。 「動いちゃダメだってばー」 こいしは少しむくれた声でじと、とまるで彼女の姉のような視線を向け、俺の頭を動かないように軽く押さえた。 こう言う所を見ると、普段はそうでなくとも似ているところがある姉妹だなと思う。 「って言ってもな」 むしろ、それと解ったのなら俺は動きたくない。 「折角膝枕してあげてるんだから」 そう呟くと彼女は、そっと俺の頭の上に掌を乗せた。 「神社からここまでは?」 俺の家だと聞かされて、出てきた言葉はそれだった。 膝枕をされた状態で、彼女を見上げたまま尋ねる。 「お空に運んでもらったよ。それで、お空には戻って貰って、後はわたし一人がここに居残り。もう結構な時間経ってるから、もしかしたらお姉ちゃんも潰された頃かもね」 何処か面白そうに、俺を見下ろして笑うこいし。 「鬼二人に?」 「うん。あなたを酔い潰した後、お姉ちゃんを引きこんでたから。あの人たちならお姉ちゃんも気を遣う事もないしね」 そりゃ大変だ。 「幾ら妖怪って言っても……」 鬼相手の飲み比べとか、相手が悪過ぎる気しかしない。 「相手が悪いよね。……それに、実はお姉ちゃんよりわたしの方が強いから」 こいしの上気した頬。 仄かに赤くそまったそれは、普段は子供っぽい彼女の外見を何処か大人のように見せて。 鼓動が微かに早くなる。 見惚れて視線を逸らせない。 頬が熱くなる。 「どしたの、まだ醒めて無いの? 真っ赤だよ?」 覗き込む彼女の顔から、視線を逸らす事が出来ない。 ――こつ。 身体を屈めたこいしの額と寝ている俺の額が緩くぶつかる。 「熱がある訳じゃないよね」 ある訳が無い、あるとすれば。 「……」 「本当にどうしたの? 言ってくれないと、解らないよ。わたしは、心が読めないんだから」 知っている、それは口に出さないで。 「こいし」 呼びかけると額を離して、微かに首を傾げるこいし。 微かに痛む頭に顔を軽く顰めながら、膝の上から頭を起こし、立ち上がる。 「あ。もう、大丈夫なの?」 何処か残念そうな声を出す彼女の姿を脇目に何も言葉を返さず、代わりに近くに転がっていた帽子を被せてやった。 「ありがと。それと、何を言いかけてたの?」 ぽすん、と帽子を被せられて上目に問いかけるこいし。 「……」 上手い言葉が出て来ない。 見惚れてた、と素直に言えばいいのか、それとも、酒に酔ってただけだ、と気にした様子もなく返せばいいのか。 「ねぇ」 不安そうに、こいしが俺を上目遣いに見上げた。 ――自分でも、何かを意識していた訳ではない。 むしろ、何も意識していないからこその行動なのだろう。 「っきゃ――」 気付けば、こいしの細い身体を強く抱きしめていた。 勢いでさっき被せてやった帽子がまた落ちる。 「……すまん、つい、抑えられなくて」 熱を持った頬、高揚する意識。 「……」 驚き、竦み上がったこいしが俺を丸い目で見上げていた。 ああ、これはきっと俺の手を振りきって逃げてしまうのだろうな、と直感的に思う。 でも。 彼女がここで嫌、と言ったらみすみす手を離してしまうのか? 昏い欲望が深層に生える。 離さない、離したくない、いや。 ここで拒絶されて、彼女に命を奪われたとしても。 俺は人間で、彼女は妖怪、殺す事など造作もない筈だ。 なのにこの手は、彼女の体を抱き締め続ける事をやめようとしない。 渇望している、この少女からの俺に向けられる事の無いであろう感情を。 拒絶したかのように、竦んだこいしの身体を――。 「……寂しいの?」 ぽつり。 俺を見上げたまま、こいしはそう呟いた。 「寂しいだなんて」 思ったことも、無かった。 これはただ怖いだけ、こうやって抱き締めた事の拒絶が。 「でも」 なら何で、身体が震えているのかな。 そう呟いて、こいしは身体の力を抜いて、そっと預けるように持たせかかってきた。 「……あ」 俺の腕から力が抜け、こいしをそっと支えてるような状態になる。 「私には、あなたの心の中は解らないから。……解らないから」 一度俯いて、ぽそぽそとこいしが呟く声が聞こえる。 「だから」 しっかりとした声が聞こえたかと思うと目の前には、見上げたこいしの顔。 「……ちゅ、っ」 「っ!?」 全身の血液が沸騰しそうなほどに熱い感覚が全身を走り抜ける。 何をされているか気付くまで、一瞬以上の思考を要した。 その思考ですら淡く、柔らかく押しつけられた唇に白へと焦がされていく。 吐息が、呼吸が、ただただ熱く、甘い。 「だから、こうやって伝えるしか、無いんだよ。好き、だって」 そっと唇を離して、彼女は微笑む。 「……っ、はぁ、こいしっ」 やっと解った。 寂しい、と思ったのは月を見て、己を知ったから。 外の世界で馴染む事が出来ず孤独でしか居れなかった昔の己自身。 幻想郷では異邦人でしかない全く特殊な力の無い現在の己自身。 何れかの力を持った他の妖怪や、無意識を操る程度の能力を持ったこいし。 自分自身が何もかもから隔絶されていた気がして。 だから。 「俺は、寂しかったん、だな」 言葉にすると、こいしは微かに頷いて胸元にぎゅ、と抱きついてきた。 「解ったんだね。……ところで、答えは?」 強く抱きついたまま、赤く上気した頬で見上げられる。 「ああ、目を閉じろ」 微かに笑って目を閉じたこいしの唇に、緩く口付けた。 「こいし、お前が好きだ」 淡く唇を重ね、瞳を覗き込むと彼女は満面の笑顔を浮かべた。
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Eこいし No.181 タイプ:ノーマル 特性:むいしき(天気変化の効果を無効化する) HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早 95 85 90 140 65 80 ばつぐん(4倍) --- ばつぐん(2倍) かくとう いまひとつ(1/2) --- いまひとつ(1/4) --- こうかなし ゴースト Eこいし 解説 覚える技レベルアップ 技マシン タマゴわざ 解説 特攻種族値が素晴らしく高いが、タイプ一致技が無い。実のところ、Eこいしの特殊技は特攻種族値80のタイプ一致技と同程度。 覚える技 レベルアップ ちびこいし こいし Eこいし 技 1 1 1 はたく 7 7 7 ちいさくなる 11 11 11 しろいきり 15 15 15 ふういん 19 19 19 ゆびをふる 23 23 23 マジカルリーフ 27 28 28 テクスチャー 31 33 33 マジックコート 35 38 38 ひみつのちから 39 43 43 スキルスワップ 43 48 54 スーパーエゴ 47 53 65 ねがいごと 技マシン マシン 技 技06 どくどく 技07 あられ 技10 メロメロ 技11 にほんばれ 技13 れいとうビーム 技14 ふぶき 技15 LUNATIC 技17 まもる 技18 あまごい 技24 10まんボルト 技25 かみなり 技27 おんがえし 技32 かげぶんしん 技34 でんげきは 技35 かえんほうしゃ 技38 だいもんじ 技42 からげんき 技44 ねむる タマゴわざ ねんりき おいうち たつまき こごえるかぜ シグナルビーム
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コダマ名 HP 攻撃 防御 速度 合計 属性1 属性2 攻撃属性 弱点 耐性 スキル 必要アイテム ちびこいし 85 90 55 60 290 無 - 無樹闇 闘 霊 - こいしカード Nこいし 110 105 90 85 390 無 樹 無樹闇 炎氷闘毒風虫 霊水雷樹地 閉じた恋の瞳 不偏の霊珠 Tこいし 100 110 100 80 390 無 闇 無闇炎樹 闘虫然 理霊闇 閉じた恋の瞳 技の霊珠 Hこいし 120 110 85 75 390 無 炎 無炎樹闇 水闘地岩 霊炎樹氷虫鋼然 閉じた恋の瞳 祝福の霊珠 Aこいし 105 130 80 75 390 樹 闘 樹闘無炎闇 風炎氷毒理然 水雷樹地岩闇 閉じた恋の瞳 力の霊珠 ※青文字は属性一致、赤文字は重複弱点、緑文字は重複耐性、灰色は無効、(括弧内)はスキル効果あり ちびこいし.gif Nこいし.gif Tこいし.gif Hこいし.gif Aこいし.gif ちびこいし Nこいし Tこいし Hこいし Aこいし スキル 閉じた恋の瞳 交代で登場したターンのみ、受けるダメージをSLv×16%減少します。 スペル スペル名 属性 威力 消費 詳細 必要銭 ちびこいし Nこいし Tこいし Hこいし Aこいし 妖怪ポリグラフ 無 80 20 自分の攻撃を10%上げます。(初期) 3000銭 ○ ○ ○ ○ ○ 弾幕のロールシャッハ 無 100 30 自分の速度を10%上げます。 20000銭 ○ ○ ○ ○ ○ スーパーエゴ 無 120 40 自分の攻撃を100%上げます。 100000銭 - ○ ○ ○ - イドの解放 無 120 40 自分の速度を100%上げます。 100000銭 - ○ ○ ○ - リフレクスレーダー 無 100 30 先攻で攻撃します。 500000銭 - ○ ○ ○ - 無意識の遺伝子 無 150 50 与えたダメージの1/6、相手のVPを減少させます。 300000銭 - ○ ○ ○ - 無 200 80 与えたダメージの1/4、相手のVPを減少させます。 禁呪 - ○ - - - キャッチアンドローズ 樹 80 20 通常攻撃 3000銭 ○ ○ ○ ○ ○ ローズ地獄 樹 100 30 相手の速度を20%下げます。 20000銭 - ○ ○ ○ ○ サブタレイニアンローズ 樹 120 40 与えたダメージの1/8、相手のVPを減少させます。 100000銭 - ○ - - ○ ブランブリーローズガーデン 樹 150 50 与えたダメージの1/6、相手のVPを減少させます。 300000銭 - ○ - - ○ 樹 200 80 与えたダメージの1/4、相手のVPを減少させます。 禁呪 - - - - ○ フィゲッティスナッチャー 闘 80 20 通常攻撃 3000銭 - - - - ○ アンアンサードラブ 闘 100 30 自分の攻撃を20%上げます。 20000銭 - - - - ○ 闘 120 40 自分の攻撃を30%上げます。 禁呪 - - - - ○ 恋の埋火 炎 80 20 通常攻撃 3000銭 - - ○ ○ ○ 没我の愛 炎 100 30 自分の攻撃を20%上げます。 20000銭 - - ○ ○ ○ 炎 120 40 禁呪 - - ○ ○ ○ スティンギングマインド 闇 80 20 通常攻撃 3000銭 ○ ○ ○ ○ ○ DNAの瑕 闇 100 30 相手のスキルを無効化します。 20000銭 - ○ ○ ○ ○ 闇 120 40 禁呪 - ○ ○ ○ ○ カード効果 アイテム名 装備時効果 契約コダマ 入手(金額) 備考 こいしカード 攻撃と速度が20増加します。 ちびこいし 大吉印の福袋・アイテムショップ(2000000銭) 17-7クリアでショップ追加
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こいし 加入条件:22章クリア後に自動的に加入 初期装備:トロン 初期能力 Lv クラス HP 力 魔力 技 速さ 幸運 守備 魔防 移動 武器レベル 20 魔道士 28 0 16 11 11 10 3 4 6 本B 成長率(%)【試行回数50回】【Ver1.12】 HP 力 魔力 技 速さ 幸運 守備 魔防 80 0 86 78 62 56 64 76 成長率(%)【試行回数100回】 HP 力 魔力 技 速さ 幸運 守備 魔防 75 0 83 77 72 45 52 78 ステータス上限 クラス HP 力 魔力 技 速さ 幸運 守備 魔防 賢者 60 20 30 28 25 30 20 25 特徴 驚異の成長率を誇る下級職Lv20 育てるにはマスタープルフを使ってクラスチェンジが必要なわけだが 実質23章しか育てる機会がないのでボーナスキャラという感じが強い。 しかしその23章だけで賢者Lv20にすることもできる。 わらわらと出てくる増援すべてを倒させるとちょうどLv20になる。 驚異の成長率を楽しもう。運がいいと力以外すべて上昇することもある。 Lv20になると総合的に魔理沙・アリス・パチュリーをあっさり超える。 さとりとの支援会話は23章を共に戦って終章でやっとできる。 支援会話 さとり (レベル3MAX時)
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Aこいし No.233 タイプ:こころ/ゆめ 特性:むいしき(天気変化の効果を無効化する) HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早 90 60 85 140 85 90 ばつぐん(4倍) --- ばつぐん(2倍) しんとう いまひとつ(1/2) おばけ/げんそう いまひとつ(1/4) こころ こうかなし --- コスト:210(コスト技の威力:120) Aこいし 解説 育成例拘りアタッカー 習得技レベルアップ卵技技マシン 解説 無効タイプのない2種の一致技をC140から撃ってくる高火力特殊アタッカー どれくらい高火力かと言うと拘った状態で、等倍前提ならばエナジーボールを2発確定で耐えられる相手が居ない。あのDパチェやしんぎょくTも2発で沈む 加えて、H90、BD85のため耐久力は決して低くない ただし過信は禁物 シグナルビームとエナジーボールで相性補完がほぼ完了しているため、サブウェポンはお好みで選んでも大丈夫 覚える技の関係上、夢単タイプや夢・心タイプがやや苦手 同系同士で衣装が同じでポーズが似ているため混乱しやすい 向かって右を向いて手で第三の目を抱えているのがSこいし、右手を上げているのがAこいし、グリコ、オワタ、太極拳鶴の構え両手を挙げているのがこいし 育成例 拘りアタッカー 性格 臆病 特性 無意識 持ち物 拘りドロワ 努力値 C252 S252 技構成 エナジーボール シグナルビーム (自由枠1) (自由枠2) 自由枠:吹雪、雷、大文字、シャドーボール等 タイプ相性は無視してごり押せ! 拘りC140の一撃に全てを賭けた型。似た様な事がエリスでもできるが、向こうは幅が狭い 上記でも述べているが夢・心がどちらも半減になる夢単・夢心・夢神の複合タイプが苦手 これらに等倍で通せる冷凍ビームか吹雪はあると便利 総じて命中率が低くなりがち、その様は正に特殊版(はりきり)フランを思わせる 習得技 レベルアップ ちびこいし Aこいし 技 威力 命中 タイプ 分類 PP 1 - ほしがる 40 100 心 物理 25 5 - ほごしょく - 100 幻 変化 20 10 - サイコショット 40 100 理 特殊 25 16 - マジカルリーフ 60 必中 然 特殊 20 21 - テクスチャー - - 幻 変化 30 27 - テクスチャー2 - 100 幻 変化 30 32 - あくのはどう 80 100 暗 特殊 15 38 - シグナルビーム 90 100 心 特殊 15 - 1 ほのおのパンチ 75 100 炎 物理 15 - 1 れいとうパンチ 75 100 氷 物理 15 - 1 かみなりパンチ 75 100 風 物理 15 - 1 ナイトヘッド - 100 化 特殊 20 - 1 スマイル - 100 心 変化 20 - 1 みがわり - - 幻 変化 10 - 1 シャドーボール 90 100 化 特殊 15 - 1 スキルスワップ - 100 理 変化 10 - 1 ふういん - 100 神 変化 10 - 1 エナジーボール 120 75 夢 特殊 5 - 43 トライアタック 80 100 心 特殊 10 - 46 くすぐる - 100 夢 変化 10 - 49 10まんボルト 90 100 風 特殊 15 - 52 こころのめ - 85 心 変化 40 - 56 シャドーボール 90 100 化 特殊 15 - 60 スキルスワップ - 100 理 変化 10 - 64 ふういん - 100 神 変化 10 - 68 エナジーボール 120 75 夢 特殊 5 卵技 技 威力 命中 タイプ 分類 PP ゆめくい 75 100 暗 特殊 10 トリック - 100 理 変化 10 ロックオン - 100 理 変化 20 じばく 200 100 幻 物理 5 げきりん 120 80 暗 物理 5 ねごと - - 幻 変化 10 技マシン No. 技 威力 命中 タイプ 分類 PP 06 どくどく - 85 瘴 変化 10 13 れいとうビーム 90 100 氷 特殊 10 14 ふぶき 120 75 氷 特殊 5 17 みきり - - 夢 変化 10 20 しんぴのまもり - - 神 変化 25 21 シグナルビーム 90 100 心 特殊 15 24 10まんボルト 90 100 風 特殊 15 25 かみなり 120 70 風 特殊 10 27 おんがえし 102 100 幻 物理 20 30 シャドーボール 90 100 化 特殊 15 32 かげぶんしん - - 幻 変化 15 34 エナジーボール 120 75 夢 特殊 5 35 かえんほうしゃ 90 100 炎 特殊 15 37 サイコカッター 70 100 理 物理 20 38 だいもんじ 120 80 炎 特殊 5 39 がんせきふうじ 55 95 地 物理 15 43 ひみつのちから 70 100 幻 特殊 20 44 ねむる - - 幻 変化 10 45 メロメロ - 100 心 変化 15 48 スキルスワップ - 100 理 変化 10 50 マインドボム Cost 100 心 物理 20
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コダマ名 HP 攻撃 防御 特攻 特防 速度 合計 属性1 属性2 攻撃属性 弱点 耐性 スキル1 スキル2 必要アイテム ちびこいし 90 30 60 100 70 70 420 無 - 無炎 闘 霊 閉じた恋の瞳 - こいしカード Nこいし 115 50 90 120 100 85 560 無 樹 無樹炎闇 炎氷闘毒風虫 霊水雷樹地 閉じた恋の瞳 無意識を操る程度の能力 霊珠 Aこいし 125 40 90 130 100 75 560 樹 闘 樹闘炎 風炎氷毒理 水雷樹地岩闇 閉じた恋の瞳 無意識を操る程度の能力 力の霊珠 Tこいし 110 50 90 110 110 90 560 無 炎 無炎樹霊 水闘地岩 霊炎樹氷虫鋼 閉じた恋の瞳 無意識を操る程度の能力 技の霊珠 Sこいし 110 50 80 120 90 110 560 無 - 無炎 闘 霊 閉じた恋の瞳 無意識を操る程度の能力 疾風の霊珠 Hこいし 110 50 100 110 105 85 560 無 闇 無闇炎 闘虫 霊理闇 閉じた恋の瞳 無意識を操る程度の能力 祝福の霊珠 ※太文字のみは禁呪、青文字は属性一致、赤文字は重複弱点、緑文字は重複耐性、灰色は無効、(括弧内)はスキル効果あり ちびこいし Nこいし Aこいし Tこいし Sこいし Hこいし スキル 1.閉じた恋の瞳(Lv25習得) 常に回避率が5%上がります。 2.無意識を操る程度の能力(Lv50習得) スペル攻撃時、5%の確率で相手を怯ませます。 スペル スペル名 属性 分類 威力 命中 消費 詳細 ちびこいし Nこいし Aこいし Tこいし Sこいし Hこいし 妖怪ポリグラフ 無 特殊 70 200 0 - 初期 初期 - 初期 初期 初期 コンディションドテレポート 闘 特殊 60 100 5 使用したターンのみ、回避率が1.2倍になります。 - - 初期 - - - 胎児の夢 闇 変化 - 75 15 相手を眠らせます。 15 15 15 15 15 15 恋の埋火 炎 特殊 90 100 20 20%の確率で、相手を火傷させます。 20 20 20 20 20 20 弾幕のロールシャッハ 無 特殊 100 100 20 30%の確率で、相手を混乱させます。 レンタル限定 30 - 30 30 35 キャッチアンドローズ 樹 特殊 80 100 15 20%の確率で、相手を麻痺させます。 - - 30 - - - サブタレイニアンローズ 樹 特殊 80 100 15 与えたダメージの1/8、相手のVPを減少させます。 - 35 - - - - グローイングペイン 樹 特殊 90 100 20 30%の確率で、自分の特攻が1段階上がります。 - - - 35 - - フィゲッティスナッチャー 闘 特殊 100 100 30 10%の確率で、相手を怯ませます。 - - 35 - - - 弾幕パラノイア 闇 物理 - 100 20 後攻になります。相手が物理攻撃を仕掛けてきた場合、受けたダメージの2倍のダメージを与えます。属性、スキル、アイテムなどでダメージが変動しません。 - - - - 35 - 没我の愛 闇 特殊 90 100 20 30%の確率で、相手を混乱させます。 - 40 - - - 30 スティンギングマインド 闇 特殊 100 - 10 使用から2ターン後のターン冒頭に攻撃します。ダメージはその場にいるコダマのステータスで決定します。このスペルは属性、装備、スキルの影響を一切受けません。 - - 40 - - - 嫌われ者のフィロソフィ 樹 変化 - - 20 5ターンの間、特殊攻撃のダメージを半減します。交代しても効果は継続します。 - 60 - - 40 60 イドの解放 無 変化 - - 15 自分の特攻を2段階上げます。 - - 60 40 - - 夢枕にご先祖総立ち 霊 特殊 100 100 20 相手が睡眠状態の場合、ダメージが2倍になります。 - - - 60 - - 無意識の遺伝子 闇 物理 - 100 20 自分のレベル×1.2の固定ダメージを与えます。属性、スキル、アイテムなどでダメージが変動しません。 - - - - 60 40 ローズ地獄 樹 特殊 100 100 25 数ターンの間、相手のHPとVPに継続してダメージを与えます。 - 禁呪 - - - - ブランブリーローズガーデン 樹 特殊 100 200 30 相手が空中・地中・亜空間のいずれかにいる場合を除き、使用ターンのみ相手の回避値が0になります。 - - 禁呪 - - - DNAの瑕 無 変化 - 100 5 相手のスキルを2つ同時に無効化します。 - - - 禁呪 - - スーパーエゴ 無 変化 - - 10 自分の防御、特防を2段階上げます。 - - - - 禁呪 - リフレクスレーダー 闇 特殊 60 100 15 先攻で攻撃できます。 - - - - - 禁呪 カード効果 アイテム名 装備時効果 契約コダマ 入手(金額) 備考 こいしカード 無属性スペルで与えるダメージが25%上昇します。 ちびこいし 中吉印の福袋美月堂(3,000,000)
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Hこいし タイプ:無/闇 スキル1.閉じた恋の瞳:常に回避率が5%上がります。 スキル2.無意識を操る程度の能力:スペル攻撃時、5%の確率で相手を怯ませます。 重複弱点(3倍):闘 弱点(2倍):虫 抵抗(1/2倍):闇 重複抵抗(1/3倍): 無効:霊/理 種族値・同タイプ比較 無/闇 HP 攻撃 防御 特攻 特防 速度 合計 Hこいし 110 50 100 110 105 85 560 Tぬえ 125 105 85 60 90 95 560 スペル スペル名 属性 分類 威力 命中 消費 詳細 備考 妖怪ポリグラフ 無 特殊 70 200 0 - 回避殺し。回避無視ではないが、消費がない分どれだけ相手が粘ろうと交代しようと無駄である。 胎児の夢 闇 変化 - 75 15 相手を眠らせます。 困った時のいつものコレ。 恋の埋火 炎 特殊 90 100 20 20%の確率で、相手を火傷させます。 鋼で止まらないこいし系統の重要スペル。 没我の愛 闇 特殊 90 100 20 30%の確率で、相手を混乱させます。 下のシャッハを基本的に使う。岩相手か弱点を突く時のために使用する。 弾幕のロールシャッハ 無 特殊 100 100 20 30%の確率で、相手を混乱させます。 安定のメインウェポン。混乱は行動不能確率だけで言うなら麻痺を上回る厄介なバステ。自然治癒のために交替させれば交替先までこれを喰らう。 無意識の遺伝子 闇 物理 - 100 20 自分のレベル×1.2の固定ダメージを与えます。属性、スキル、アイテムなどでダメージが変動しません。 分類が特殊ではないので反射対策にもなる優秀なスペル。 嫌われ者のフィロソフィ 樹 変化 - - 20 5ターンの間、特殊攻撃のダメージを半減します。交代しても効果は継続します。 相手が特殊型で速度が上回るなら、より等倍の殴り合いに強くなれる。 リフレクスレーダー 闇 特殊 60 100 15 先攻で攻撃できます。 Hこいし唯一にして最大の個性。 基本評価 無闇に普通なこいしちゃん。HこいしちゃんのHは普通のHである。 必要のないA以外はおしなべて平均かそれよりやや高めの種族値。弱点は突けないかわりに優秀な無属性技。分類が逆転しているナイヘ。まさに普通。まさに人並み。 特徴と言えばこいし系統では唯一の先制持ちであること。爆発力はなく、突出した強みもないが大変安定した実力を発揮するオールラウンダータイプ。 運用方法 霊と組ませよう! とりあえず、BP振り次第で運用が変わる。大別してCSぶっぱ型とHCぶっぱ型が基本か。 CS型は混乱付与やスキルの怯み5%に催眠を利用して、相手の動きを封じながら叩くタイプである。要は他のこいし系統とあまり戦略は変わらない。 HC型は等倍の殴り合いに特化したタイプである。無振りでも実数値S195なので中速無振りはあっさり抜け、ダメージ軽減やHP吸収を持てば火力の安定感もあってかなり長持ちする。ただ、耐性はロクにないのが無視できない欠点。 単体での戦力は低くないが高くない。なので、相性補完の良い霊と組ませよう。 相性のいいコダマ とにもかくにも霊と組ませたい。ただ、霊の弱点は補えるがそれ以外はサッパリなのが頭を抱えるところ。できるだけ複合属性側の弱点が少ない霊と組ませたい、ということになる。 プリズムリバー姉妹 選択肢も多く、5%上昇スキルがCS型には嬉しいところ。 霊/闘 こいしで補えない弱点は風だけで、霊/闘が完全停止する霊/無属性への対抗力も高い。そのうえカナは麻痺撒きでHC型でも抜ける相手が増え、AD美鈴は共に先制持ちであり、S神子は5%スキル持ちとオススメの組み合わせ。 霊/無 上記の霊/闘は敵に回すと恐いので、この相棒で停止させてしまおうという目論みである。ただ、お互いに安定感は高いが突破力が低い。Nルナサはやや火力が高めだがお互いに突出したステータスが無いというのが気になる。 屠自古 単体で耐性が良く、補えない弱点が地面だけなので悪くない。お互いにやや硬めであり、安定感が高いという共通点も良い。どちらかというと他のPTメンバーとの兼ね合いに良いタイプか。 D芳香 やや変則系。補えない弱点が地面なのは屠自古と一緒の強みだが、さらにパンデミックしてしまった相手をリフレクスレーダーで仕留めるという連携が強力。 苦手なコダマ 霊/闘は味方にしておくには頼もしいが、敵となると途端に苦手となる。相棒と共に弱点を突かれるからだ。とくに速度を上回り先制格闘技を螺光歩してくるAD美鈴は天敵。 AD美鈴でなくても、一致格闘技を先制で撃って来る相手は天敵である。リフレクスレーダーが半減されるので、速度で上回っていても勝算は低い。この点ではまだ霊/闘はマシであるとすら言える。 とにかく格闘対策だけは怠らないようにしたい。格闘対策さえしていれば、ついでに虫も対策される。これぞほんとの無視して良い。 BP振り 運用法で述べた通り、CS型とHC型が基本である。 CS型はCを53振りにとどめ、Hをナイヘ3発調整しても良い。 HC型はS調整しても良い。S64型A美鈴が怖いので、210越えが目安。このあたりまでいけば麻痺さえさせれば相手が時渡っていても大体抜ける意義も強い。 変態型として、BSぶっぱ型もある。特殊は障壁、物理はステータスと装備で耐え、ひたすら等倍ナイヘ催眠で押すタイプだ。 装備候補 さとりc こいし系統の定番。CS型の催眠重視用。阿求じゃダメ。気持ち的に。 火力増強 等倍火力の安定感がHこいしの武器。HC型では特に欠かせない。 速度上昇 CS型での選択肢。時渡ればちょうどS110の64振りとほぼ同じ。 ダメージ軽減 耐久の底上げ。催眠なんかに頼れるか!という人向き。 ユウカカード 上記のダメージ軽減との併用オススメ。HC型だと等倍での殴り合いでは地味ながら相当強い。 バステ付与 メインウェポン二種が割と高い確率で混乱にするので、オマケに何かしら行動不能系を持たせると期待値が高まる。安定の猛毒でも良い。ただ、炎が通らない鋼がいたらさすがに猛毒はやめておいた方が良い。 コメント欄 名前
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人里の一番端に位置している表札の無い我が家。 幻想郷に迷い込んでから数年が立ち、自立することを決めた時に それまで世話になっていた慧音さんが里の人達に掛け合って用意してくれたものだ。 長らく人の手が入っていなかったらしく、最初は荒れに荒れていたが、 住むにあたって掃除をする際にこれまた世話好きな慧音さんが手伝ってくれたこともあり、 割とすぐに人が健康で文化的な最低限度生活をできる空間を取り戻した。 あの人には本当に頭が上がらない。いつか恩を返せるだろうか。 「くぅ……」 その年期を感じさせる縁側にて、一人月を仰ぎ酒を啜る。 古びた柱に体重を預け、十月の寒気を伴った夜風で酔いを抑える。 見上げた空は、昨日の豪雨が嘘だったかのように澄み渡っており、 一人で飲む酒の肴にはうってつけのものだ。 こういう風景も幻想郷だからこそ見られるものなのだろう。 向こうではこんなにゆっくりする余裕も無かった。 今日も博麗神社で宴会があったらしいが、気分ではないので丁重にお断りした。 地下の住人も来るらしいが、また次の機会もあるだろう。 「―――あらあら、一人で何をしているのかと思えば……随分と寂しいことを」 と、しみじみ風情を感じていればそれを台無しにする人物が一人。 声の主は神隠しの主犯であり、誰もが手を焼く困ったさんな隙間妖怪、八雲紫そのひとだった。 声をかけられるまで存在に気付けなかったことから、恐らく空間の隙間を潜って来たのだろう。 わざわざご苦労様であるが、相手にする義務も必要も無い。疲れるだけである。 折角の休日に余計な心労を持ちたくはない。 無視して、もう一杯酒を飲むことにする。 「不味いわ」 ……が、気付けば手の中に今まで飲んでいた杯は無く。 いつの間にかに、八雲紫に奪われていた。 「不味いわ」 「二度も言うな。返せ」 「嫌ですわ」 「帰れ」 「客人に対して茶の一杯も出さずにそれはどうかと思うけれど」 「玄関から入らない他人は客じゃない」 「あなたが招かなくても客は客よ」 埒があかない。 どうするかと悩んでいると、八雲紫はどこからともなく高級な雰囲気を漂わせる酒瓶とグラスを 取り出して一人で飲み始めた。何をしに来たんだお前は。 何となく小さな敗北感を覚えて、それを誤魔化す為に徳利から酒を継ぎ足し俺も晩酌を再会した。 互いに一言も喋らず、俺にとっては気に入らない空気が続く。 ――――そして、数十分が経過した頃。 「どうして」 「?」 「どうして、今日の宴会に来なかったのかしら?」 八雲紫の問い。 一呼吸おいて、杯の中の酒を飲み干し答える。 「気分じゃなかった」 「嘘ね」 酒を注ぎ足そうと徳利を引っ繰り返しても、酒は一滴も出て来なかった。 「嘘じゃない」 「嘘よ」 「嘘じゃない」 「嘘」 「嘘じゃ――」 「本当は」 八雲紫が俺の言葉を遮って言う。 「彼女がくるからでしょう? おかしな話。 好きな人に会うのが怖くて、嫌われるのが怖くて来られないなんて」 言葉を失う。 「それに、このままでもいいって自分に嘘をついてる」 言い返せないのは、それが本当のことだからだ。 感じる憤りは、自分に対するものと八雲紫に対するものだろう。 酔いが回っているのか、気分が異様に高揚している。 脳が熱せられ、単純な思考が封じられる。 それ以上は言うな。黙れ。五月蠅い。 「馬鹿な子。まるで恋に恋した臆病な乙女じゃないの」 「黙れ」 「あら怖い。でも普段は落ち着いているあなたがこんなになるのも―――」 「黙れ」 徳利を盆に叩き付け、台詞を遮る。 八雲紫はにやにやと、まるでチェシャ猫のように気味悪く笑っている。 気にくわない。 「それじゃあ、私は退散しましょうか」 きっとすぐに、おもしろいことになるけどね。 最後に耳にまとわりつく声を残して、八雲紫は隙間に消えて行った。 その場には、彼女がいた痕跡として飲みかけの酒瓶と空になったグラスが残されている。 「……」 彼女がいなくなった途端、頭の熱が冷めた。 酒気や熱気も一緒に持って行ったのか。 吹く風邪が異様に寒く感じる。 あまりいい気分はしない。今日はここでお開きにしよう。 「寝よう……」 カタン。 と、片付けを始めようとした瞬間に庭から物音。 今度は何だ、と億劫に感じて振り向けば。 「…えっと……こんばんわ、かな?」 「……」 大きな黒い帽子、癖のある銀の髪、黒いつぶらな瞳。 姉のさとりとは対象的な、胸部の閉じた第三の瞳。 振り向けば、古明地こいしが、そこにいた。 「え、あ……」 言葉に詰まる。 静まっていた熱が再び上昇する。頬に赤みがさし、鼓動が加速する。 脳裏に八雲紫の姿がちらつく。 くそ、落ち着け。これじゃあ―――― 「上がってもいい?」 「っ、ああ……うん…」 我に返り、頷く。 おじゃまします、と断りをいれて靴を脱ぎ礼儀正しく縁側へ上がってくるこいし。 その姿をみていると、一つ疑問が込み上げてきた。 答えは解り切ったようなものだが、一応確認しておく。 「あのさ」 「なに?」 「なんでこんな時間に?」 「あの隙間妖怪が、『面白いものが見られるわよ』って」 やはりか。 瞬時にイメージされる扇子で口元を隠し意地悪く笑う彼女の姿。 不快なそれを、頭を振って追い払う。 「ところで」 「……っ!」 耳元で聞こえた声。 気が付けば目と鼻の先。 徒もすれば唇が触れあいそうな距離にこいしが迫って来ており、思わず後退る。 「さっきの話に出て来た『彼女』って」 ずい。 それに追い打ちを掛けるように更に距離を詰めるこいし。 たまらず、こちらも更に後退る。 そうすると、また容赦無く前へ。 それに合わせて、自分も後ろへ下がる。 「誰のこと?」 ぴたり。 遂に柱にまで追詰められ、これ以上下がる事は出来なくなった。 対してこいしは構わず、先程よりも更に近づいて。 「う……」 言えるわけが無い。 何せ、本人が目の前にいるのだから。 「だめ」 気まずく顔を逸らそうとして、頬を冷たい両手に押さえられた。 指先は冷たいが、不思議と熱が冷めることはない。 「………」 「………」 両者見つめ合うこと数分。 体感時間にすれば永遠にも近いそれは、まさしく生き地獄であった。 息伝いを感じ、睫の一つ一つが大きく見え、毛穴ですら確認できる位置。 密着した体は、衣服を通り越して心臓の鼓動を相手に伝える。 鼻孔から侵入する薔薇の香りに似たこいしの甘い匂い。 感性が麻痺し、理性が崩れてしまいそうな空間で、俺は動けずにいた。 境界線を越えればもう後戻りはできない。 進めば後悔、後にも後悔。 友人以上、恋人未満の心地良く生温い関係が終わる。 その認識が、熱で飛びかけた理性を繋ぎ止めていた。 「……始めはね、胸が変だと思ったの」 ぽつり、と普段と変わらない調子で言う。 「だけど、あなたの姿を見る度に。 あなたの顔をみる度に、ここが弛んでいくような気がして」 こいしが押さえた箇所は、閉じた第三の瞳がある胸。 かつて自ら閉ざした心の弱さ、嫌な現実から逃げた象徴。 「気が付けば、あなたのことをずっと見てた」 それが開きかけているということは、つまり。 「お姉ちゃんに聞いても、教えてくれないの」 自分の考えが正しければ、それは彼女も知っている筈だ。 あえて答えを教えなかった思惑も、俺の考えが間違っていなければ当たっている。 果たして、それは自惚れなのだろうか。 「初めて、人の心が解らないことを後悔した」 目を瞑り、淡々とした声音でつげるこいし。 「ねえ、あなたのことを、もっと教えて?」 徒もすれば、唇が触れあいそうな距離。 それを、俺は。 「――――」 「…………」 自らの意志で、ゼロにした。 「ん……」 軽く触れ合うだけのもの。 初めてのキスは、何の味もしなかった。 十秒もなく、またすぐに離れる。 「どうだった?」 「よく解らない……けど」 頬を朱に染め、戸惑いの表情を見せている。 「お姉ちゃんの言おうとしてたことは解ったわ!」 次に求めてきたのは向こうから。 軽く啄む様に小さな口で俺の唇を挟んでくる。 湿気を持つ、力の無い優しく柔らかい感覚。 繰り返して行われ、口内に言いようのない味が充満する。 行為を受ける内に、それがこいしの味だということに気付いた。 閉じた歯の隙間からにゅるりと浸入する赤い舌。 拒むことなく、自分のそれを彼女のそれに絡める。 俺はこいしを感じて、こいしは俺を感じている。 互いに互いを求め、強く抱きしめあう。 もう離さない、と言わんばかりに強く力を込めて。 「あなたは私が好き」 「お前は?」 「もちろん!」 出来たばかりの恋人たちの夜は、始まったばかり。 行き過ぎた行為に規制をかける魔女も、今はいない。 やがて二人は、どちらからでも無く、服に手をかけて―――― 「さて、これで満足?」 隙間が閉じられ、映像が途絶える。 見ていたものは先程までの行為。 それを見ていた者は、地霊殿の住人たち。 皆一様に顔を真っ赤にし、その後について想像している。 「まさかここまで仲が進むとは思わなかったけど……」 そう口にしたのは、こいしの姉であり地霊殿の主である古明地さとり。 八雲紫に頼んで二人の仲を進展させるようにし、隙間からその様子を覘いていたのだ。 「私は二つの酒瓶を倒しただけよ……じゃあ私はもう行くけれど……」 「ええ、ありがとう……」 大きな欠伸をして、隙間を開き消えて行く彼女を見送り、礼を言う。 「これであなたが幸せになってくれるといいんだけど」 「大丈夫ですよさとりさま!」 「そうそう、相手もそんなに軽いやつじゃなさそうだしねー」 さとりの思惑通り、二人はくっついた。 それが良いことかは解らない。 だからさとりは、ただ妹の幸せのみを願った。 後で自分の彼氏に、さっきの妹に負けないくらい甘えてやろうと決めて。 新ろだ85 ─────────────────────────────────────────────────────────── ――私は、○○のことが好き。 外来人の癖に人里から離れた森の奥に住んでる変わり物だけど、優しいし暇を潰しに遊びに行けばお菓子とお茶をくれる。 ○○の家で昼寝して、ついうっかり寝過ごしちゃってもちゃんと毛布をかけてくれる。 偶に頭を撫でてきて髪をくしゃくしゃにしてくるけど、大きな手は暖かいし気持ちいい。 だから、今日も特に理由は無いけど○○の家に遊びに行った。 行ったんだけど―― 「はぁ……」 「むぅ?」 何というか、違うのだ。 縁側で日向ぼっこしてる姿とか、のんびりとお茶を啜っているところとかはいつもと同じなんだけど。 ……日光浴より月光浴の方が体に良いってこの前言ったんだけど。 何だかよくわからないけど、雰囲気というか空気と言うか。 とにかく、いつもと同じ様子の○○はいつもとどこかが違う○○なのだ。 「あぁ……こいし、いらっしゃい」 「うん、お邪魔するー」 そうして暫くじっと見ていたら、何故だか○○に気付かれた。 いつもなら私が声を掛けるまで絶対に気付かれないのに。 よく分からない。首を傾げつつも、上がっていいと許可を貰ったので、いつもどうりに○○の胸までまっしぐら。 男にしては細身な割に、そこそこ逞しい体は抱き付いて気持ちがいい。 だから今日も抱き付いた。 抱き付いたんだけど―― 「ぐふ、」 「あるぇ?」 思いっきり押し倒してしまった。 そうすると必然的に○○のお腹に馬乗り状態になっちゃうんだけど。 倒れた○○は目が開いたままなのに死んだみたいにピクリとも動かなくて、少し 気持ち悪い。 なにがあったんだろう? 「今日のあなたは意味が分からないんだけど……何か悪いものにでも憑かれたの?」 例えばお燐の怨霊とか。 ○○はよく博麗神社に行くし、変なものが頭に憑いていてもおかしくない。 だけど○○は静かに首を横に振って、私を抱き上げて横に退かすとゆっくりと起き上がった。 「――ケンが、死んだんでさぁ」 「……え?」 ケン、というのは○○の飼っていた犬の名前だ。 大きな白い犬で、お姉ちゃんの飼っていたペットたちと違って知能も低いし大した力も無いけれど、とにかく人懐っこくて毛がふかふかしていた。 私もここに来る度に、背中にもふもふと抱き付いていたものだけれど。 「……なんで?」 「分からないなぁ、一昨日までは元気に庭を駆け回ってたんだがなぁ」 ――昨日にはそこで動かなくなってた。 ポツリと呟いて、縁側の柱に目を向けた。 特に悲しみだとか、辛いだとかそんな感じはしないんだけど。 何にも考えていないような、無意識に犬の駆け回る姿を追っているような。 ○○の目には景色が写っているけど、○○の目には景色が見えていないんだろう。 きっと、○○だけにしか見えないケンの姿を見ているんだろう。 それは良くない、私の好きな○○はそんな顔はしない。 「……えい」 「おう!?」 だから私は○○の頬を抓った。 間抜けな声を出して、赤くなった頬を撫でさする涙目な○○。 よし、ちょっとだけいつもどおり。 「……こいし?」 あ、ちょっとだけ怒ったみたい。 「だって、今日の私の好きなあなたは、私の嫌いなあなたなんだもん」 「はぁ?」 「つまり、私は○○が大好ってこと」 言うだけ言って、○○の胸に顔をうずめる。 ○○は少しだけ呆けていたけど、呆れたように溜め息を吐くと抱きしめ返してくれた。 そうして、大きな手で私の頭を撫でてくれた。 ○○は優しい、私の我が侭にも付き合ってくれる。 もし私にお兄ちゃんがいたら、こんな感じなんだろうなぁって思う。 ぎゅうって抱き付いた○○の体はとっても安心出来て、暖かくて。 暖かい春の陽光に身を任せて、私たちは微睡みに落ちて行った。 ――だから私は、○○が好き。 新ろだ365 ───────────────────────────────────────────────────────────